ITで顧客の声を社内共有 業務プロセス・組織の切れ目をなくす(後編)

瀬尾英一郎(月刊ソリューションIT編集部) 2004年09月28日 10時00分

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現状の業務プロセスを意識せず、「あるべき姿」を模索する

 最初に熊谷担当部長がプロジェクトの推進役に任命された時、システムを具現化するための具体的な指示は何も出されなかったという。「最前線で活躍するメンバー7名が集められましたが、どんなシステムを構築すればよいのか、最初は皆目見当が付かず、途方に暮れました」と熊谷担当部長は当時を振り返る。

COMFORCE推進担当 熊谷仁担当部長

 ともかく任命されたメンバー7名でディスカッションを繰り返した。当時、社長からは「社内の人間とはなるべく接触するな」と言われたという。これは現状に引っ張られるのを配慮しての指示だった。現場からは、細かな改善案こそ出てくるが、根本的な解決策の提案は期待できないというのだ。

 通常のシステム開発は、現状の問題点を洗い出し、それを解決できる方法を模索する。だが今回熊谷担当部長は、まったく異なるアプローチを採った。「本来の業務の『あるべき姿』を模索し、それを実現できる仕掛けを検討しました」(熊谷担当部長)というのだ。現状から一旦離れ、自社の強味を最大限発揮できる業務モデルを検討。営業から積算、施工といったプロセスを分解・整理し、もっとも効率良いプロセスを模索した。その後、理想の業務プロセスを実現するために、必要な情報とタイミングを洗い出した。

IT推進本部IT戦略システム部門 藤本晴彦担当部長

 要件が固まった段階で、藤本担当課長の開発チームにバトンタッチした。藤本課長は要件を元にシステム化の可否や、実現方法を探った。パッケージの導入も検討されたが、複雑な要件に対応するには大幅なカスタマイズが必要となる。そのため今回は見送りすべてスクラッチ開発とした。プロジェクトには社内から5名、外部スタッフ約20名が参加。約1年かけてシステムを構築した。

 今回のプロジェクトは、コアとなる業務分野すべてを対象とする巨大なものだ。だが、既存の基幹システムには一切変更を加えていない。もちろん必要なデータを取得するためのインタフェース開発はあるが、ロジック部分の変更はゼロ。「基幹システムをスッポリCOMFORCEが覆うイメージです」(藤本担当課長)とのことだ。

 システムは順次カットオーバーさせていった。第1弾として営業系システムを4月1日に運用開始。その後、算定系、経営管理系、施工系の順に立ち上げた。全面稼働までに半年を要した。

 今回特に注意したのは、パフォーマンスの部分だ。1つの案件が成立して工事が完了するまでに、受注や調達、進捗管理など、最低で205のトランザクションが発生する。こうした案件が月に約1600件あるため、月間の総トランザクション数は30万件を超える。しかも毎日均等に入力されるわけではない。月末や夕方に集中する。そこでシステムをハングアップさせるわけにはいかない。

 そこで処理能力と負荷を詳細に見積り、テストを繰り返した。「それでも本番環境に移行すると思わぬ事象が発生し、しばしばレスポンスが悪化することがありました」(藤本担当課長)とのこと。最終的に3台のLinuxサーバーを立て負荷分散させることで、安定稼働を実現しているという。

 今は、システムのグレードを上げていく段階だ。初期段階から、何度もバージョンアップをして、使い勝手を向上させ、不足している機能を追加している。

システムの効果を発揮するには、ユーザーの意識向上が必要

 熊谷担当部長は今回のプロジェクトについて「仕組みを作るよりも、いかに使ってもらうかに腐心しました」と振り返る。

 COMFORCEは、従業員の7割にあたる約2500名が利用している中核システムだ。当然、業務に与える影響も計り知れない。

 システム導入において、現場の反対は避けられない。しかもプロジェクトを推進しているのは、1年前まで同じ部署にいたメンバーだ。熊谷担当部長は「説明に行くと、裏切り者呼ばわりされて大変でした」と苦笑いする。

 それでも、トップダウンのプロジェクトということで説得を繰り返し、なんとか導入にこじつけた。だが苦労はそれでは終わらなかった。現場の担当者が、なかなかデータを入力してくれなかったのだ。

 たとえば営業系システムでは、商談のプロセスを把握したかった。そのためには、最初にアプローチした段階から、訪問や営業活動の内容をタイムリーに入力してもらう必要がある。だが大抵の営業マンは、あまり営業先を明かしたがらない傾向があり、成約して初めてデータを入力してくる。上司がアドバイスしようにも、これでは打つ手がない。

 そこで、アプローチ先を事前に登録しておかないと、成約情報を入力できないようにするなど、工夫を凝らしたという。

 だが結局は、担当者自らの意識を変えていかないと、運用の定着は難しい。商談プロセスを逐一報告するのが、案件を成立に結びつけるためのものであり、会社のため、ひいては自分のためだと理解させないとダメだという。

 そのためには、「地道な啓蒙活動を根気よく繰り返すしか方法はない」とも言う。「数年かけて、一歩一歩に意識改革を進めていきます」(熊谷担当部長)

 システムの導入効果については、本格的に表われるのは数年後と見ている。現在でも業務効率の向上といった効果は確認されている。だが、それはシステム導入目的の一部に過ぎず、経営そのものを支えるには至っていない。算定や経営管理に必要な情報が、まだ蓄積されていないからだ。十分なデータが揃い、そのデータを利用した業務と経営のサイクルが確立されてこそ、システムの潜在能力を発揮でき、COMFORCEの目的である「社内情報の共有化とコミュニケーション向上」を実現できると、同社では見ている。

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