ERP選択のポイントは「手離れの良さ」SIへ依存しない開発体制を整える(後編)

瀬尾英一郎(月刊ソリューションIT編集部) 2005年01月25日 13時00分

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ボトムアップ型のプロジェクトをトップが強力に支援

 そもそも勉強会がスタートしたのは、2001年の4月に遡る。設計・製造・販売の各社の連携を強化することで可能になる事業展開や、求められる業務プロセスを検討した。

 2002年4月から12月にかけて、外部コンサルに依頼して現状分析と将来のビジョンを策定した。業務革新の基本構想と基幹システムの導入方針が固まったのが2002年末。ここで社長にシステム開発提案書を提出。実際に着手したのは2003年の1月だった。

 プロジェクトでは、各業務部門からキーマンを引き抜いてきてメンバーとした。

 実は勉強会のメンバーと社長が話をしている時に、「成功させるにはどんなメンバーがいるといいのかな?」と軽く話を振られたという。そこで、「○○さんや××さんがいると助かりますね」と、気になる人をリストアップしたところ、挙げた人物がそのままメンバーに任命されたとのことだ。

IT・IE室 IEグループ 下田清史課長

 下田課長は「随分と大胆なことをしてくれたと、びっくりしました」と苦笑する。

 システム導入においては、現場との軋轢が生じるのが常だ。だが今回は、現場のキーマンをプロジェクトに集められたため、説得が非常にスムーズにいったと言う。

 今回の目的はシステム導入ではなく、システムを利用した業務改革だ。「SpeedとSimple、Smileをテーマに掲げました。業務プロセスをシンプルにすることで経営のスピードを向上させ、顧客満足度を向上させようと考えたのです」(宮川業務部長)とのことだ。

 そこでメンバー全員で、業務プロセスの見直しをかけた。その後WBSを使って業務要件を整理。最良の業務シナリオをデザインしていった。

カットオーバーの延期が功を奏し新しい業務にスムーズに移行

 今回のシステム導入に伴い、業務プロセスは激変した。当初の計画通り、生産計画は本社側と現場での一元管理に移行。立案サイクルも、月次から週次へと短縮し、市場の変化に柔軟に対応できるようになった。

図 プロジェクトの経緯

 物流も抜本的に見直した。以前は岩手と秋田の2工場に、神奈川にある本社から支給資材を送り、完成品も、それぞれ独立した配送ルートを使っていた。それを花巻に資材調達拠点を新設して支給品の配送をやめ、完成品はトラックが両工場を回る共同配送としたのだ。

 各工場の在庫量も本社側で集中管理している。欠品が起きそうになれば、花巻からサプライヤに直接発注をかける。

 経営のサイクルも短縮された。原価情報が速やかにR/3にトスされ、各工場および本社で、コスト状況を確認できるようになった。富士フイルム本体への連結決算データのトスも、スムーズになった。まさに「業務革新」が図られたわけだ。

 大規模な業務改革には、現場の混乱が付き物だ。だが今回、現場担当者にそれほどの戸惑いはなかったという。

 実はプロジェクトの遅延が、新業務へのスムーズな移行を促していたのだ。

 プロジェクトの上流において、仕様の確認に十分な時間をかけられなかったため、ユーザーニーズを洗い出しきれなかった。そのため評価の段階に入って修正要件が次々に出てきてしまったのだ。やむなくカットオーバーを3カ月延長した。

機器事業部 業務部長(業務・資材)兼IT・IE室 宮川和由氏

 「プロジェクトとしては褒められたものではありません。けれども、この遅れによって、立ち上げがスムーズになったとも言えます」(宮川業務部長)。

 通常ならば、新しい業務プロセスへの移行とシステムの切り換えが同時に実施する。だが今回、まずシステムに依存しない業務を先行して新しいやり方に切り換えた。3カ月間運用した後、システムおよびシステムを使う業務を切り換えた。業務を段階的に移行させたため、担当者の混乱を抑えられたという。

 今回のシステム導入で、経営の基盤は、ほぼ整ったと同社では見ている。

 今後はシステムを活用しながら、競争力強化に乗り出す。生産リードタイムや在庫を圧縮し、納期遵守率を高めることで、低コストの中国生産に打ち勝とうというのだ。そのためにも、システムのブラシュアップや2次開発、データウェアハウスなどのフロント系システム整備は欠かせない。自社の開発力を高めることで、そうしたハードルを軽快に乗り越えていくとのことだ。

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