小さな改善を積み重ねたリコーのマルチチャネル戦略(後編)

小林正宗(月刊ソリューションIT編集部) 2005年05月24日 11時37分

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提供プロセスに着目して CRMを実践する

 リコーにおけるCRMの特徴は、顧客満足度向上策を2つの軸で捉えている点だ。1つは「製品やサービスの満足度」、もう1つは「製品やサービスの提供プロセスの満足度」だ。

 製品やサービスの満足度を向上させる施策は、目に止まりやすい。新たな機能を加えたり、デザインを変えることで満足度は上がる。だが、これは分かりやすいだけに他社が真似しやすく、競争優位が持続しにくいという欠点がある。

 一方、提供プロセスの満足度とは、提供する仕組みにより顧客を満足させることだ。たとえば、あるPCメーカーはコールセンターが24時間つながり、商品の到着も早いとする。サポートの電話の声も丁寧だ。FAQの回答例も実に的を射ている。一つひとつはそれほど目を見張るものではないし、顧客がそれらのサービスをすべて意識するわけではない。だが、すべてを積み重ねた時、顧客が「なぜかあの会社の製品を買ってしまう」ことにつながる。アウトプットとしての利益は格段に異なるわけだ。

 後者の仕組みは地味だが、実はバックエンドの仕組み作りが難しい。あらゆる顧客接点を見直し、組織を連携させ、BPR(Business Process Re-engineering)を実現しなければならないからだ。だが、一旦その仕組みが定着すれば、他社には真似できないものになる。そこで、当時NetRICOHの構築を担当した新規事業開発室のメンバーは、「提供プロセス改革」のコンセプトの下、プロジェクトを開始した。

部門の壁を取り払うため 顧客接点を持つ組織を統合

 新規事業開発室が描いたNetRICOHの理想形は、以下の3つを実現するものだった。

  • 情報提供や物販、ASPのサービスを提供
  • 顧客ごとにカスタマイズされた画面を提供
  • マルチチャネル

 たとえば、顧客がトナーが足りないことに気付き、NetRICOHにアクセスする。そこには、自社で使っているトナーやコピー用紙など消耗品の一覧が並んでいて、クリックすることで、いつもどおり割引価格で注文できる。別の日に営業担当者がコピー用紙を頼んでも、請求書は1つにまとめられている。商品の到着日を指定することも可能だ。

 この仕組みを実現するには、WebとSFA、コールセンター、リモート管理サービス、CE(カスタマー・エンジニア)向けシステムを統合する必要があった(図5参照)。当然、コールセンターやマーケティング、営業といった各部門の強力なタッグが不可欠だ。マルチチャネルCRMを進めるには、この組織の壁を越えることが最大の難所となるケースも多い。

図5 リコーのマルチチャネルCRMの実現像

 幸いなことにリコーの場合、組織の壁はほとんど問題にならなかった。経営トップの号令の下、顧客接点を持つ部門が統合され、「e-CRMセンター」が発足したからだ。経営層は、各組織のベクトルを合わせることで、部門最適に陥らないように配慮したのだ。花井氏は「我々の他にも、商品担当はマーケティングのニーズからDBの統合を検討し、営業部隊はSFAの導入を考えていました。また、営業マンの業務プロセス改革に取り組むチームもいました。それらの組織が統合されたことで、バックエンドのシステム連携もスムーズだったのです」と話す。

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