最近、コンポジットアプリケーションという言葉が注目を集めている。これは、既存の業務システムを複数組み合わせて新たに作成した業務システムのことである。たとえば在庫管理システムと顧客管理システムを組み合わせて作成した、顧客満足度の向上を目指した営業用システムなどである。新しいシステムを開発する際、一から作り直すのではなく、既存のシステムを活用するため低コストで迅速に開発できることから注目されている。
このコンポジットアプリケーションという考え方は、実は従来から存在していた。それが、最近現実的な選択肢として改めて注目を集めるようになった背景には、Webサービスなどのシステム間を連携させるソフトウェア技術の進歩に加え、EAが普及してきたことも大きく寄与している。EAに基づかない従来型のシステム開発においては、そのシステムを利用して新たに別のシステムを将来作成することをあらかじめ想定しないことが多かったため、コンポジットアプリケーションの実現は容易ではない。なんとかコンポジットアプリケーション化に成功しても、その後の運用・保守に個別システムを並列して運用するよりもコストがかかる場合が多い。
EAでは、企業が保有するシステム全体の理想的な将来像を描き、そこに向けて進んでいくための現実的な計画をたてていく。そうすると、多くの場合で理想的な将来像としてコンポジットアプリケーションにたどり着く。低コスト、迅速なシステム開発という視点から、コンポジットアプリケーションは非常に優れているからである。EAには「柔軟で変化に適応できるシステムの実現」という目標があるが、柔軟なシステムを実現する手段の一つがコンポジットアプリケーションというわけである。一時的な開発費用は高くなるかも知れないが、企業全体のシステムコストという視点では、将来の拡張を想定すると低く抑えることができる。
コンポジットアプリケーションの実現を目指す企業では、EAの中で既存のシステムをコンポジットアプリケーションに適したものに変えるための計画を策定することになる。現在企業が抱えているシステムはコンポジットアプリケーションを意識したものではないことが多く、既存システムの改修計画もEAの取り組みの中で定めていく必要がある。現在においては、コンポジットアプリケーションの成功にはEAが必須といえるだろう。
(みずほ情報総研 システムコンサルティング部 近藤 佳大)
※本稿は、みずほ情報総研が2005年7月5日に発表したものです。