「保守的で堅実な販売で顧客が抱える導入リスクを最小限に抑える」--CPU処理専用装置を出荷する米Azul Systems

日川佳三(編集部)

2005-07-14 21:00

 業務システムのキャパシティ・プランニングの考え方を変える製品が、米Azul Systemsが開発したCPUアプライアンス「Azul Compute Appliance」である(関連記事)。アプリケーション・サーバのCPU処理能力だけを切り出し、複数システムからネットワーク経由で共有できるようにする。この6月に出荷が始まった製品の販売戦略を、同社副社長兼CMO(最高マーケティング責任者)のシャヒン・カーン(Shahin Khan)氏に聞いた。

--CPUのアプライアンス化というコンセプトは斬新だ。ユーザーの評価はどうか

 現在のデータセンターの状況を考えると、CPU能力のサイジング(容量設計)を変える我々のコンピューティング・コンセプトには将来性があると確信している。新興企業のため認知度は低いが、ユーザーからの期待は大きく、反応も良い。7月14日現在では実運用の事例を挙げるには時期尚早だが、試験導入案件は増えている。

写真右は米Azul Systems副社長兼CMO(最高マーケティング責任者)のシャヒン・カーン(Shahin Khan)氏、写真左は、同社シニアディレクタービジネス開発の北島弘氏

 ユーザーにメリットを評価してもらうための方策として、慎重かつ保守的なアプローチを採っている。Azul Compute Applianceの対象はJavaアプリケーション・サーバが担っているウェブベースのビジネス・トランザクションであり、この分野のユーザーとエンジニアは技術レベルが高く、業界は保守的なアプローチを好むからだ。

 具体的には、「No Cost Evaluation」(無償評価)と呼ぶ45日間の無償評価プログラムを用意した。アプライアンスの出荷とインストール、技術サポートを含むもので、45日間の評価期間を終えた後の返送費用もAzul Systemsが負担する。ユーザーは、導入を決める前に、トライアル導入時期を経て、期待値に沿う性能が出るかどうかを慎重に確かめられる。こうした慎重で具体的なアプローチは、市場の受けが良い。

--無償評価プログラムは堅実な試みだ。

 そうだ。無償評価プログラムは、米国では本社が直接、日本ではパートナである販売代理店経由で提供する。正確な数値は言えないが、同プログラムを利用したユーザーは、金融、通信事業者、旅行会社など、全世界で2桁のオーダーに達している。米国ではまた、CPU数で1万6000個に達するAzul Compute Applianceのショー・ルーム兼デモンストレーション・センターを設置し、ユーザーに利用してもらっている。

 こうしたアプローチの背景にある考え方はシンプルだ。「顧客のリスクを最小限に抑える」ということだ。新たな試みを実装した製品である以上、ユーザーが抱える不安感を取り除くよう、実証実験やトライアル評価、改善などに特に力を入れる必要がある。また、こうした地に足の付いた活動に取り組んでいる点をアピールして市場の信用を勝ち取ることが、販売戦略上極めて重要になる。

 我々はフィールド試験にもじっくり取り組んだ。2004年11月から半年以上の期間を試験に費やし、市場に出荷した。既知の問題点はすでに解決済みであり、出荷後、今まで新たな問題は出ていない。仮に問題が発生しても、即座に対応する。コンセプトには自信がある。あとは、いかにしてユーザーのリスクを取り除くかが勝負だ。

--Javaアプリケーション・サーバのCPUライセンスはどうなっているのか

 Javaアプリケーション・サーバ、つまり、IBM WebSphere、BEA WebLogic、JBossなどを開発しているソフト・ベンダーは、我々のパートナだ。協力関係を構築している。我々は彼らに、サイジングに悩むユーザーに対してAzul Compute Applianceを紹介してもらっている。もちろん、ライセンスの問題も考えてもらっている。

 まだまだ案件自体が少ないため、アプリケーション・サーバ製品にはAzul Compute Appliance向けの特別なライセンスは存在しない。今後、アプライアンスの採用例が増えてくれば、ソフト・ベンダーがライセンスを一般化していくだろう。確かなことは、現状、ソフト・ベンダーの全面的な協力の下、Azul Compute ApplianceのユーザーはCPUライセンスの問題をクリアしているということだ。

--今後の展開を教えて欲しい

 今後の展開は、Azul Compute Applianceのさらなる性能の向上だ。我々の製品は(Java環境や.NET環境などの)仮想マシンのサイジングを狙っているため、製品を改善する開発期間を短く済ませられる。CPUの設計時に、バイナリ互換性を考える必要がないからだ。我々は優位に立っている。

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