業務効率化に狙いを定め、プロジェクトの反発を抑える(後編)

小林正宗(月刊ソリューションIT編集部) 2005年07月26日 10時00分

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スケジュールと
職員の調整が難航

 プロジェクトの道のりは平坦だったわけではない。これだけ大規模なプロジェクトとなると、すべての職員が何らかの形で携わる上、ステークホルダーは多岐にわたる。各職員は、日常業務の合間を縫ってスケジュールを設定するが、時間が限られているため調整は難航したという。

 また、複数のシステム開発が同時並行している点も関係者を悩ませた。たとえば、総合行政情報システムは、ポータルや職員認証など複数のシステムから構成される。それらを短期間で構築するため、1つのシステムがカットオーバーしてから次の開発に移るのでは間に合わない。そのため、複数のプロジェクトを同時並行で動かしていたのだ。小嶋氏は「ほぼ1日刻みのスケジュールでした。明日までにある事項が決まっていないと、別のシステム開発が滞ってしまうという程でした」と振り返る。

 さらに、懸案だった情報セキュリティの強化も一筋縄ではいかなかった。たとえば新たに導入する1700台のPCは、ICカードがないと利用できない。セキュリティを確保するためネットワークのIP体系を変更しているので、認証されたPCしか厚木市のネットワークに参加できない。つまり、旧来機種と新機種が併用できないため、ある一時点で新機種へと一気にPCを切り替える必要があった。

厚木市役所市政企画部情報政策課情報政策係主幹兼情報政策係長の高橋久雄氏

 「事前に、どこに何台PCを配置するのか決めるには、職員の配置や業務の中身、業務フローなどを慎重に把握する必要がありました。『ここは臨時職員なので複数人で1台しかいらない』と決めるだけでも、関係部署との綿密な打ち合わせが必要でした」(同係主幹兼情報政策係長 高橋久雄氏)と説明する。

 結局、情報政策課の職員が、交代でほぼ毎週末出勤し、PCの配置などを実行していった。新たなPCの設置だけで1カ月半、LANの工事を含めると約3カ月を要したという。

情報セキュリティ対策を
業務効率化と組み合わせる

 個人情報漏洩対策は、反発もあったという。たとえばUSBなどのPCデバイスの利用に対する不満がある。厚木市役所では、2004年に情報セキュリティポリシーを策定し、CDロムやUSBの一部機能を停止している。当然、「CDロムが付属しているのになぜ自由に使えないのか?」という声があった。

 これらの反発を抑えられた理由について、小嶋氏は「根気よく調整し、各職員の理解を得られたことが成功に結びついたと思います」と話す。たとえば業務上デバイスの利用が必須な部署には、セキュリティ研修を実施。各課の係長クラスから「ITリーダー」を任命してもらう。ITリーダーは、研修結果を踏まえた上で、運用ルールを自部署に伝える仕組みとしている。

 そして何より、具体的にシステム導入の効果目標を掲げ、業務プロセス改革と結びつけたことが、セキュリティの導入をスムーズにさせた最大のポイントだろう。

 ICカードやPCは、単なる個人情報保護法対策として導入されたわけではない。前述のとおり、IT化により、市民サービスと事務処理の向上を狙うためのシステム基盤に位置付けられている。そのため、以下の3項目について、具体的な数値目標を掲げた(図5参照)。

図5 電子文書化等による効果目標

  • 行政文書の70%を電子決裁化:決裁する文書の70%を電子決裁化して、事務処理を迅速化することで業務効率化を図る。
  • 複写枚数を80%削減:決裁や文書事務の電子化により、コピー枚数を現行の20%程度にまで引き下げる。
  • 発生文書の90%をデジタル化:内部文書を徹底的にデジタル化し、文書管理の合理化と効率化を図る。

 つまり、システムの導入により、文書管理や電子決裁などが実現すれば、職員の業務を大幅に効率化し、コスト削減できることを見込んでいた。セキュリティの確保は、そのための必須条件だとの認識が、職員の中に浸透していたのだ。セキュリティ強化を業務効率化と結びつけていたことが、職員のモチベーションの向上に大きく貢献したと言える。

職員データを一元化し
異動に伴う管理工数を削減

 統合セキュリティネットワークでは、NECのLANスイッチ「UNIVERGE」を約300台のほか、同社の認証サーバー「UNIVERGE RD1000」と、ソリトンシステムズデスクトップPCセキュリティソフト「SmartOn NEO」を導入。職員向けのポータルには、NECの「StarOffice21」を採用している。

 ICカードを取り巻くシステムは、2005年1月にカットオーバーされ。職員は、ICカードなしではPCにアクセスできない上、20分間キー操作をしないと自動ロックがかかる。PINコードと呼ばれる暗証番号を併用することで、一層セキュリティを向上した。また、休日に市役所を訪れる際、ICカードでドアを開閉できるようにした。

 さらに、システム管理者向けの機能も充実させた。認証用の職員データを一元化し、異動に伴うデータ更新の工数を削減。庁内ネットワーク接続に利用するIPアドレスを一元管理し、ネットワーク接続ログを集中管理できるようにした。

 その他、総合行政情報システムの構築も順調だ。まず2005年2月には、厚木市のホームページを大幅に改定。市民が目当ての情報にいち早くたどり着けるよう、アクセシビリティとユーザビリティに配慮している。電子決裁システムもカットオーバーし、現在はマイナートラブルの解消に努めている。

 当面は、各職員の業務効率や成果を客観的に評価する「行政評価システム」を2005年上期に完成させるべく、プロジェクトを進めている。情報政策課では、1年後をメドにシステム導入効果を測定し、より利便性を追及していく方針だ。

ユーザー・システム・カルテ

組織概要
名称(敬称略)厚木市役所
業種地方自治体
総職員数約2000名
プロジェクト概要
システム名称総合行政情報システム
協力インテグレータNEC、NECフィールディングほか

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