日本企業の発明は収益に結びついていない--日本IBMが研究開発の重要性を強調

田中好伸(編集部) 2005年08月01日 18時05分

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 日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は7月29日、同社の大和事業所(神奈川県大和市)で同社の研究開発への取り組みを説明した。

 大歳卓麻社長は、1995年から2004年の間、米国における特許取得数ランキングで上位10社の中に日本企業が毎年4〜5社ランキングしているという統計データを挙げて「日本企業は発明は得意だが、必ずしも収益に結びついていない」と説明した。「企業が成長する原動力は、インベンション(invention、技術革新や発明)とインサイト(insight、社会に対する洞察)が交差することで生まれるイノベーション(innovation)にある」と語り、日本企業の課題はインベンションをイノベーションに変えられないことにあると指摘した。

 インベンションをイノベーションに変化させることで日本IBMが収益を上げた事例として、鉄鋼メーカーの物流体制の最適化を取り上げた。この事例では、大和事業所内にある東京基礎研究所とIBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS)が共同で取り組んだ。

大歳卓麻・日本IBM社長

 東京基礎研究所が持つ「巡回セールスマン問題」と呼ばれる問題を解明するためのアルゴリズムを活用して、鉄鋼メーカーの物流コストを削減することに成功していると大歳社長は説明した。「東京基礎研のインベンションとIBCSのインサイトが融合したことで、鉄鋼メーカーの経営変革に役立てることができた」(大歳社長)と説明し、インベンションとインサイトの融合が収益をもたらすことを説明した。大歳社長によれば、先に上げた鉄鋼メーカーとほぼ同様の案件について「顧客企業からの相談が増加している」という。

 IBMは毎年、インベンションの観点から世界的な技術の動向を把握する報告書「Global Technology Outlook(GTO)」とと、インサイトの観点から世界の市場動向を把握する報告書「Global Market Trend(GMT)」をそれぞれまとめている。また昨年からは、イノベーションの動向をまとめた報告書「Global Innovation Outlook(GIO)」を作成している。大歳社長は、「IBMでは、これらの報告書をもとにIBMの戦略を構築している」と語り、IBMにとってのイノベーションの重要性を説明した。

 日本IBMで開発製造部門を担当する内永ゆか子専務取締役は、日本の研究開発拠点である「APTO(Asia Pacific Technical Operations)」での研究開発への取り組みを説明した。大和事業所はAPTOの中核拠点であり、東京基礎研究所、大和システム開発研究所、大和ソフトウェア開発研究所、エンジニアリング&テクノロジー・サービスがある。

内永ゆか子・日本IBM専務取締役(開発製造担当)

 また大和事業所には、スーパー・コンピュータの研究開発を行うための「ディープ・コンピューティング開発研究所」がある。企業がIBMのスーパー・コンピュータ「Blue Gene」を使用する際のシステム構築と支援を行う。「Blue Geneの処理性能を最適なものにするためには、開発者によるチューニングが必要」(内永氏)として、開発者自身による最適化チューニングを行っている。

 APTOは5月からデジタル家電・組み込み機器向けにサービスを始めている。これは「IBMが社内で獲得してきたインベンションである統合製品開発(IPD)と呼ばれる開発手法を顧客企業に提供する」(内永氏)もの。デジタル家電や組み込み機器を開発段階からコンサルティングの形で携わり、開発プロジェクトの管理、開発手法の提供、製品を開発するための共通プラットフォームの構築などを行う。サービスを提供するためのデジタル家電・組み込み機器向けの専任部隊として「DCE Innovation Service」を結成している。

 内永氏は「これらのサービスを活用すれば、スパゲティ・コードになりがちな組み込み機器のソフトウェアをすっきりさせることができる。さらには遅れがちな開発を計画通りに進行させることもできる。計画通りの製品出荷で機会損失を減少させることができる」と説明し、そのメリットを強調した。

日本IBM

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