靴売場にICタグを導入し、顧客起点のSCMを構築する(後編)

小林正宗(月刊ソリューションIT編集部) 2005年09月27日 10時00分

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阪急百貨店(有楽町)
キオスク端末の操作性に配慮し
靴を素早く検索可能にする

 阪急百貨店では当初、靴の在庫管理の効率化を図るため、ICタグの導入を検討していた。それまではJANコードを利用して在庫を管理していたが、靴を保管している倉庫が複数箇所に分かれていたため、保管期間が長くなると、どこにどの在庫があるのかが曖昧になっていた。

 売場での在庫管理も、決して効率的ではなかった。ICタグの導入前は、「売り消し帳」と呼ばれるノートで在庫を管理。靴が入荷するとそれをメモし、商品が売れる都度、消し込む業務フローだった。だが繁忙期になると、どうしても消し込みの精度が落ちる。そうなると、ノート上では在庫はあるものの、実際に倉庫に行くと品切れだったというケースが多くなってしまう。

 これらは商品の移動が伴うので、従来型のJANコードでは解決できない。そこで、すでにICタグ対応在庫管理パッケージを販売していた東芝テックと共同で、2004年4月からICタグの実証実験を実施した。

 阪急百貨店ネット販売事業部統括部長兼ファッションMD計画室長の西谷正弘氏は「ICタグを導入して1〜2日で販売員から『これは非常に便利だ』との声が上がりました。導入して1週間もすると、当初はあまり考慮していなかった販売サービスの質の向上こそが、本質的な効果だと分かってきたのです」と振り返る。

▲阪急百貨店 ネット販売事業部 西谷正弘統括部長兼ファッションMD計画室長

 たとえば、店頭のキオスク端末を使えば、在庫の有無だけでなく、類似品も瞬時に検索できる。また、ICタグは専用端末に靴を置くだけで在庫確認ができるため、操作の説明が不要だ。これらは、JANコードでは実現できない。

 実際に利用した顧客にアンケートをとったところ、「わざわざ店員に聞かなくても在庫を確認できるのが便利」という意見が目立った。特に、SサイズやLサイズだけを取り扱う靴売場での実証実験では、「大きいサイズの靴の在庫を聞くのは恥ずかしいので、このシステムは気に入った」との声もあったという。

 この実験結果から、ICタグの効果を確認。そこで本格導入に向け、百貨店協会の一員として、本格的な実証実験に乗り出した。

キオスク端末を
「第三の販売員」と位置付ける

 西谷氏は、特にキオスク端末の操作性に細心の注意を払った。顧客が直接操作するため、できる限りユーザビリティに優れたシステムにする必要があったからだ。

 たとえば、顧客が靴を検索して在庫がなかった場合にどうするか?操作画面上で、色や形が異なる類似品を検索するボタンを赤く点滅させることで、そこに注目するよう工夫を施している。

 阪急百貨店が導入したICタグシステムは、三越のものと同様だ。だがキオスク端末の外観は、三越のものと若干異なる。西谷氏は、キオスク端末の存在感を出すため、設置位置やPOPの立て方に気を配っている(画面2参照)。

ICタグリーダーとなるキオスク端末(阪急百貨店)

 また、靴売場のレイアウトにも細心の注意を払った。現状では、ICタグを付けた靴のブランドは限られているため、同じ売場の中で、キオスク端末を使って検索できる靴と、そうでないものが混在しているのだ。顧客が「この棚にあるものは端末を使って在庫を検索できる」と直感的に分かるには、端末と靴の配置を工夫する必要があった。

 西谷氏は「キオスク端末を『第三の販売員』として捉えています」と高く評価している。最大の理由は、キオスク端末自身が顧客サービスを提供するほか、店員の業務を省力化できるからだ。

 百貨店は、ディスカウントストアとは異なり、価格での差別化は難しい。自ずと、品揃えの豊富さとサービス品質で競うしかない。キオスク端末で、ある程度店員の業務を省力化できれば、その分接客でキメ細かなサービスを提供できるようになる。阪急百貨店は、まさにこの点を評価し、2005年4月からの本格導入に踏み切ったのだ。

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