「検索技術はこれからが本番」--SOAによる検索基盤でリーダーを狙うFAST

井津元由比古

2005-11-04 10:00

 ビジネスにおける重要な情報は、当たり前のようにデータとしてシステムに格納されるようになった。その結果、企業が蓄積する情報量は1年間で2倍になるという調査もある。そんな背景から、これまでビジネス市場ではまったく顧みられてこなかった検索技術が「Enterprise Search」として注目度を増している。コンシューマ市場で、すでに十分に利便性が認識されているこの技術。果たしてビジネス市場でどのような進化を遂げるのか。リーディングベンダーの1社であるノルウェー企業、FAST Search & Transfer社のCEOで共同創業者でもあるJohn M. Lervik氏に話を聞いた。

--FASTの創業からこれまでと、現在のビジネス領域は?

 FASTは1997年に創業して、2001年にオスロ証券取引所に上場しました。事業規模は毎年60から70%拡大していて、黒字経営です。今では日本を含め、15カ国にオフィスを構えるまでになりました。ビジネスは3つの柱から成り立っています。ECサイトやポータルサイトがサイト訪問者向けに提供する検索技術、企業内の情報検索(Enterprise Search)技術、そしてSiebelやDocumentum、EMCといったITベンダーに対する技術のOEM提供です。

--以前にAlltheWeb.comというポータルを運営していましたね。

 AlltheWeb.comは、FASTの技術を広く告知する場として運営してきました。そして、もちろんGoogleを超える検索エンジンでした。しかし、創業以来、われわれにはテクノロジー企業として成長したいという思いがありまして、Overtureからの買収提案に応じたのです。Webサイト検索用のアルゴリズム検索エンジンやAlltheWeb.comそのものは売却しましたが、企業向けの検索技術は残した。このときから、われわれはライセンスビジネスに力を入れる純粋なソフトウェア企業として歩み始めたことになります。

注:Overtureは後にYahoo!に買収され、現在はYahoo!の完全子会社となった。AlltheWeb.comは、Overtureによって今も運用されている。

「積極的な買収で技術を統合し、さらに高度な検索技術を提供する」と語ったLervik氏

--なぜ純粋なソフトウェア企業になろうと考えたのですか。

 うーん、ノルウェー人は保守的ですからね(笑)。テクノロジーを学んだPh.D(博士号保有者)が集まって会社をやっていたので、やはりテクノロジーを売り物にしたかったのです。そのころ、企業向けの検索ソリューションがこれほど注目を浴びるとはだれも考えていなかったかもしれませんが、われわれには自信がありました。実際に、今ではクリティカルな技術として認知されています。これからは、企業にとってさらに重要な分野になってきますよ。それに、ソフトウェア市場は巨大なマーケットです。

--しかし、この市場には競合するベンダーも数多く存在します。

 ええ。参入障壁が低いですから。15年から20年前、データベース市場には無数のベンダーがありました。そのころは、まだ自前でデータベースエンジンを作っている企業も多かった。しかし、その後のデータベース市場では標準化が進み、多くのベンダーが統合によって消えていきました。現在のEnterprise Search市場は、これと同じ状況にあります。多くのベンダーが存在し、自前で作っているケースも多い。今後は、ベンダー同士の合併が進み、生き残るベンダーは限られてくるでしょう。  新しい技術に光が当たれば、パラダイムシフトが起こります。そうすると、その中から大きく成長するベンダーが現れる。われわれは、その中でデータベース市場におけるオラクルや、ビジネスインテリジェンス市場でのコグノス、ビジネスオブジェクツのような存在になりたいのです。

--それは、積極的な買収によってですか。

 はい。最近も数件の買収を発表しました。顧客ベースを拡大することはもとより、買収した技術を自社の技術に統合することで、買収先の顧客に、より高度な検索技術を提供することができます。

--技術の統合は困難では?

 われわれの技術基盤である「FAST Enterprise Search Platform(ESP)」はSOAで構築されていますから、たとえばニッチな分野のモジュールを技術基盤に取り込むことなどは、極めて容易です。それに、導入も短期間で済みます。ビジネスアプリケーションを統合するような難しさはありません。

--デスクトップ検索も発表しましたね。この分野はGoogleがDesktop Searchを出したことで注目されましたが、戦略の違いは?

 10月にFAST Personal Search Platform(PSP)を出荷しました。ベータ版のユーザーもいますから、クリスマス前にはいくつかの事例も明らかにできそうです。さて、Googleとの最大の違いはセキュリティ機能です。そのほかでは、企業向けに提供することを主眼に置いているため、PSPはESPと統合されていて、ユーザーは個人のPCに入っている情報と企業内の情報のどちらにもPSPを通してアクセスできます。企業がPSPに自社ブランドをつけてユーザーに配布できることもGoogleより優れた点です。

--セキュリティの話ですが、セキュリティ機能は検索技術に組み込まれるべきだと考えていますか。それとも検索技術と共に使用するポータルやアプリケーションに搭載されていればよいと考えていますか。

 e-ビジネス向けの検索技術には、特にセキュリティが必要ではありませんが、Enterprise Searchにとってセキュリティは重要です。ドキュメントを保管しておく場所にも、ポータルへの入り口だけでなく、検索技術にもセキュリティ機能は必要になるのです。その際にパフォーマンスを低下させないことが条件になりますが、われわれはインデクシング技術を活用したことで、パフォーマンスの問題をクリアしています。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]