ガートナーが見る、2006年の戦略的技術トップ10

藤本京子(編集部) 2005年12月05日 17時01分

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 「2006年に注目すべき技術のトップ10は、バーチャリゼーション(仮想化)、グリッドコンピューティング、サービスとしてのソフトウェア(SAS)、パーベイシブコンピューティング、有機発光ダイオード(OLED)および発光ポリマー(LEP)ディスプレイ、位置認識サービス、ミッションクリティカル向けLinux、インスタントメッセージ(IM)、情報アクセス、少額電子商取引だ」。米Gartnerバイスプレジデント兼ガートナーフェローのBob Hayward氏は12月2日、同社主催のGartner Symposium/ITxpo2005にてこのように語った。

 こうした技術の中で、企業のIT部門にとって特に大きな意味を持つのが、仮想化、グリッドコンピューティング、SASだ。こうした技術をHayward氏はどう分析するのか。

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注目技術について説明するGartnerのBob Hayward氏

 まず仮想化についてHayward氏は「サーバやネットワーク、ストレージなどのリソースとユーザーの間に立ち、リソースの物理的な制限や境界線を見せなくするためのテクノロジーだ」と説明する。同氏は、IAサーバの平均的な稼働率が20%程度であることを指摘し、「ワークロードが分散できていない。こうした80%の眠っている力を活用するためにも仮想化技術は重要だ」としている。

 この仮想化を別の視点で捕らえると、グリッドコンピューティングという概念に結びつく。これは、負荷の高い処理を複数のマシンで実行する技術だ。グリッド技術は数年前から注目を浴びているにも関わらず、利用している企業は多くない。その理由についてHayward氏は「アプリケーションがグリッド対応になっていないためだ」と指摘する。既存のアプリケーションをグリッド対応にするために時間がかかっており、コンセプトができてからアプリケーションがグリッド対応になるまでの時差が発生しているというのだ。また、グリッドは自分の持つインフラを他人と分け合うため、コンセプト自体受け入れにくいとする人がいることや、セキュリティ、障害性の問題なども普及を遅らせていると同氏は説明する。

 ただ、グリッドが合理的な資源の使い方であることは間違いない。Hayward氏は、今後多くのアプリケーションがグリッド対応となり、「将来はユーザーが気づかないまま、自然にグリッドを使っていることがあるだろう」とした。

 また、グリッド技術について語られる際に避けられない話題として、コンピューティングリソースのユーティリティ化が挙げられる。必要なリソースを必要な分だけ購入するという考えだが、これについても「まだうまく活用できている企業は少ない」とHayward氏は語る。その理由は、「ソフトウェアのライセンスモデルがこのモデルをうまくサポートできていないためだ」と同氏は説明するが、グリッドコンピューティングをユーティリティモデルで採用する企業は増加するとし、ソフトウェアライセンスを含め、新たな課金モデルなどが登場することでより普及が進むとしている。

 こうしたユーティリティコンピューティングのモデルをソフトウェアの世界に持ち込んだのが、ソフトウェアを必要な分だけ利用するSASというコンセプトだ。SASは、ドットコムバブルの時代に登場したアプリケーションサービスプロバイダ(ASP)と同義語だが、当時多くのASPが失敗に終わったのは「このようなネットの使い方が信頼されていなかったことに加え、ネットワークやブラウザ技術も今ほど発達していなかったのでタイミングが悪かった」とHayward氏は述べている。

 また、当時のASP企業がターゲットを大企業に置いていたことも失敗の要因だとHayward氏は指摘する。「あの頃のASPは大企業に対し、“SAPをASPに置き換えてはどうか”といったアプローチをしていたが、大企業はすでにインフラに巨大な投資をしていたため、そう簡単に既存のシステムを捨てることができなかった」とHayward氏は述べ、「Salesforce.comをはじめとする現在のSAS企業は、主に中小企業をターゲットとしている。つまり昔のASPと違って、タイミングもターゲットも正しいため、成功する可能性も高い」とした。

 こうした技術のほかにもHayward氏は、注目すべきトレンドとして、Linuxの成熟度が高まり、ミッションクリティカル分野での採用が進むことや、企業内でのIMの活用が広がることなどを挙げている。また、現在携帯電話向けサービスで普及している小額電子決済が、「ウェブの世界でも、新聞のコラムを数十セントで購読したり、iTunes Music Storeなどで楽曲を1ドル程度で購入したりといったように、小額取引が増えるだろう」とした。

 最後にHayward氏は、これらの技術は今後さらに成熟度が高まるとして、採用をまだ検討していないのであれば、自社における技術の潜在価値を検討すべきだとした。また、今回トップ10に挙げた技術以外にも、IPテレフォニーや電話での音声認識など、注目すべき技術は数多くあるため、これらの技術だけに固執しないことも大切だと述べた。

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