第5回 使われなければ意味がない〜IT部門とユーザー部門の協力〜 - (page 2)

堀内秀明(ガートナー ジャパン)

2005-12-21 10:00

 しかし、この場合、当初の製品選定、システムの要件決定の際に、拡張性や管理性についての考慮が不十分になりがちだ。BIを利用する部門やユーザーの数が増加、同時にユーザーのニーズが高度化するにつれ、BIに消極的なIT部門の場当たり的な対応では行き詰まる可能性が出てくる。

 IT部門とユーザー部門の双方が、BIの利用に対して同等の必要性を感じ、積極的かつ協力的であれば、導入したシステムから得られる価値は非常に高くなる。同時に、BI利用が長期的に成功する可能性も高まることになる。

BIコンピテンシ・センター

 近年では、IT部門とユーザー部門が、協力的にBIに取り組み、組織としてBIの活用能力を高めるために、専門の組織を発足させる事例も確認されている。ガートナーでは、このような組織を「BIコンピテンシ・センター」と呼んでおり、BIに対する取り組みをIT主導型から幅広い組織を横断的にカバーするビジネス主導型の取り組みに発展させるために設立される。

 BIコンピテンシ・センターを設立・運営していくにあたっては、標準化の推進、方法論の確立、スキルや能力の育成のために、人と時間に対する投資が必要になる。また、さまざまなグループをまとめ上げ、優先順位についての同意を取り付け、複数の業務要件との折り合いをつけるための労力(時間、人、社内政治)も必要になる。それ以外にも、さまざまな困難がBIコンピテンシ・センターの周辺には存在するが、その結果から得られる効果は非常に大きい。

 既にBIに対する複数の取り組みを実施済みの企業では、まず社内で利用中のツールの種類(数)や利用可能なスキルについて棚卸を行い、重複や問題点をはっきりさせるべきである。ここで作成するスキル、リソース、テクノロジー、そして重複や問題点についての台帳は、BIに対する組織的アプローチを改善するために、まずなにをすべきなのかを検討するうえでの重要な基礎情報となる。

 次に実施すべきことは、BIコンピテンシ・センターの意義について役員レベルの理解を得たうえで、予算を含め、必要な初期リソースを確保するということである。初期リソースを確保したうえで、その範囲内でBIコンピテンシ・センターが当初サポート可能なプロジェクトの範囲を定義する。サポート範囲を明確化しないと、BIコンピテンシ・センターは、企業内にある、BIに関するすべての問題に対して、場当たり的に対応せざるを得なくなり、十分な成果を得ることが困難になる。

 もちろん守りに徹するのではなく、BIアプリケーションや情報の活用について、改善する能力があるということを証明する必要がある。担当役員のサポートなども得ながら、BIプロジェクトに対し、BIコンピテンシ・センターを売り込み、パイロット・プロジェクトを実施する。パイロット・プロジェクトが成功すれば、あとは徐々にサポート範囲を広げてゆくことになる。

 最後に、BIを使いこなし、期待以上の成果を得るための組織面でのポイントを以下にまとめる。

  • IT部門とユーザー部門の双方が、BIに対して積極的・協力的・継続的に取り組む
  • まずは、自社におけるこれまでのBIプロジェクト、保有スキル、それぞれの存在する場所についての棚卸を実施し、BIについての自社の現状をきちんと把握する

堀内 秀明(Hideaki Horiuchi)
ガートナーリサーチ ソフトウェアグループ ビジネスインテリジェンス担当主席アナリスト
日本国内のデータベース・ソフトウェアなどのソフトウェア市場動向・将来予測・競合分析ならびに、ビジネスインテリジェンス・システムの製品選定、システム導入に関するアドバイスを担当。
ガートナー ジャパン入社以前は、国内大手SIベンダーにて10年間、製品調査、システム提案・構築ならびに技術支援に従事。
ガートナーが最新の情報と提言を結集するイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2005」(2005年11月30日〜12月2日)にて『インフォメーション・アキテクチャーの役割と重要性』をテーマに講演を行うほか、2006年の「ビジネス・インテリジェンス・サミット 2006」(2月22〜23日)では、チェアパーソンを務める。

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