木村 外からの脅威、中からの脅威に対してきっちりとシステムに『システム』と主張させないで守っていくことが必要ですね。オープンな環境のスピード感、これを維持したまま外部からの脅威に対応しなければならない。内部からの脅威というとシステム障害や災害などがありますが、オープン性と拡張性を阻害しない範囲で堅牢なシステムを構築していかなければなりません。
コンプライアンスというのも結局、内部・外部、人・システムといった側面をきっちりと守っていき、企業の風土や文化、情報リスク管理に対する認識やシステムを変えていくことなんです。その意味で、2008年頃からと言われている日本版SOX法はシステムを一気に堅牢にし、それを守っていく絶好のチャンスになりうると思っています。
日本版SOX法をトリガーに
石橋 SOX法は本来会計の話であって、システム関係ではないんですね。でも日本では、金融庁が「IT関連には投資していく、積極的にカバーする」と発言しているから、日本では単なる会計の話では終わらなくなってきている。こういった状況、個人情報保護法もそうなんですが、こんな中で情報リスク管理はどう変わっていくのでしょうか。
大三川 利用者に「IT」を意識させてはいけないと思います。日本の場合、昔は手計算でやっていたものが情報系システムとして利用できるようになり、あわせてネットワークも発展して利便性を享受できるようになりました。ところがITを利活用することにより、利便性や生産性が高まると同時に、たとえば情報漏洩や犯罪につながるといった危険性もはらむようになってきた。
日本版SOX法がシステム関係に対しての言及に多くを割いているのも、こういった危険性への対応なのです。こうした危険性に対する政府の対応のひとつが、2005年4月に施行された個人情報保護法だといえます。企業の責任のひとつとして捉え、今後はITの利用による利便性と法令遵守をどう両立していくかが、企業における情報リスク管理のポイントになると思います。
加藤 その意味でいうと、日本企業でも米国で株式上場や登録していてSOX法の適用をすでに受けているところもありますが、では我々ベンダーがその中で何ができるのかということです。ベンダーはシステムを守るのがミッション。とすればSOX法に準拠したソリューションを提供できることが重要です。
手前味噌ですが、マカフィーは2004年にファウンドストーンという会社を買収して、先ほどの脆弱性評価の自動化を含めた企業のネットワークポリシーの策定からツール、社員の教育などを通じて、これらをセットにして日本版SOX法に対応するソリューションを提供しようと考えています。
木村 こうしてお二方とお話しできるのも時代の要請だと思うんですね。IT業界というのはまだ成熟していない。いまだにバグがあったり、システムの改善要求に時間がかかったりしている。こんなこと他の業界では許されませんよ。大変なことになる。だからもっと成熟しなさい、もっと信頼できる業界になりなさいということですね。そのために我々は衝突するところもあるけれど、協力できるところも多々あるのではないかと思うんです。
石橋 IT業界の成熟というのは近い将来、ホットな話題になるかもしれません。瑕疵担保責任がわずか6カ月、半年過ぎたら知らないよ、というのはちょっと、世間からズレてしまっているという感はあります。
木村 経営の要求とITの現状にギャップがあるんですよ。たとえばシステムがダウンしても、経営的に修理のため待てる時間は1時間しかないという状況に対応できるようになっているのか、ということです。
ですから、常に監視してプロセスとして管理していくような流れが経営にとって最も重要なITのあり方だと思います。ITは企業を支えているのだから、事業を停めてはいけない。そのためには、システムをシンプルにして監視と管理を行うことが必要です。