R・Ozzieメモ:「インターネットサービスの破壊力」 - (page 6)

文:CNET News.com Staff
翻訳校正:坂和敏(編集部)

2006-01-04 16:05

過去との違い

 このメモを読んで、「これはさまざまな意味で、われわれがすでに取り組んでいることだ。何を騒いでいるのか」と思う人もいるだろう。「われわれは数年前にも同じような挑戦をした。なぜ、今回はうまくいくというのか」と考える人もいるかもしれない。それは無理もない。このメモに書かれているようなことは、「Information at Your Fingertips」といったビジョンの中で、われわれが繰り返し描いてきたものだからだ。

 しかし、私はさまざまな理由から、このビジョンは実現できると楽観している。第1の理由は、BillとSteveを始めとする経営陣が、製品の開発・出荷プロセスを合理化することで、経営効率を上げることができると理解していることだ。最近、われわれは組織改編を行い、3事業部制を導入した。これは大きな一歩であり、各事業部のプレジデントはビジネスの俊敏性を高めるための変化に全力で取り組んでいる。

 第2の理由は、会社始まって以来の技術革新の波が、ついに終了しつつあることだ。2006年は新製品が次々と出荷される素晴らしい1年になるだろう。そして多くの従業員が、新しいミッションを引き受けることになるはずだ。

 第3の理由は、過去はともかく、今がサービスに焦点を当てる時だということだ。理由は2つある。ひとつはブロードバンドが普及し、そうしたサービスが可能になったこと、もうひとつは広告モデルの有効性が証明され、利益を見込めるようになったことだ。たとえば、Hailstormが「正しい」試みだったかどうかは議論の分かれるところだが、実行可能なサービスのビジネスモデルがあれば、その恩恵に浴することができただろう。

 今、われわれは節目のときを迎えている。ほとんどの従業員は、われわれが変わならければならない理由を理解していると思う。それはライバルであり、課題であり、チャンスだ。他社で働いていた頃、私はMicrosoftの社員が力を合わせ、ビジネス上の難題や移行に対処する姿を見て、感銘を受け、驚嘆することがたびたびあった。

 しかし、全社が一丸となって同じビジョンを追求していた時でさえ、重要なシナリオに対する取り組みにはばらつきがあった。大がかりなプロジェクトには複雑さが伴う。プレーヤーが多すぎるので、どうしても意思決定と執行が細分化してしまうのだ。グループは自分たちが全体の中でどのような役割を果たすのかを見失うかもしれない。もっと悪ければ、それがどのように利用されるのかを十分に理解しないまま、開発に取り組むことになる。そして全体が出来上がった頃には、パーツ間の整合性がとれなくなっている。組織の継ぎ目や意思決定の仕組みが製品に透けて見えたり、エンドツーエンドの重要なエクスペリエンスを提供できなくなったりすることは、何としても避けなければならない。

 複雑さは諸悪の根源だ。それは開発者を疲弊させ、製品の計画、開発、試験を困難にし、セキュリティ問題を生み出し、エンドユーザーと管理者をいらだたせる。前進するためには、あらゆる部門のすべての従業員が、「過去との違い」を自問し、複雑さを減らす方法を模索し、実践する必要がある。

 本質的に複雑さを内包している問題もある。既存のシステムをすぐに簡略化できるようなソリューションもない。しかし、新しい問題に取り組む時に、簡略化を促進するアプローチや手法を取り入れることは有効だ。包括的なシナリオに基づいて、設計や実装を行うのも一案だろう。ポイントを抑えた、ゆるやかに結合されたシステムを構築し、インターフェースに標準を取り入れることも効果がある。こうした方法の多くは、決して難しいものではない。たとえば、これまでの慣行を変え、リリースサイクルの頻度を高めるだけで、リリースの規模と複雑さは自然と激減する。この他、私が試したことのあるシンプルな方法としては、物理的な作業空間を設けるというものがあった。そうすることで、会議やEメールのやり取り、ドキュメントのレビューとは別に、関係者が必要に応じて、顔を合わせて交流できるようになる。こうした方法を使って、ローカルレベルで変化を取り入れていけば、プロジェクトごとに、実質的な違いを生み出していくことができるだろう。

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