2006年は製品やサービスを積極的に展開する“実践の年”--サンのミラー社長

山下竜大(編集部)

2006-02-06 10:42

 「The Network Is The Computer.」というビジョンを掲げ、“オープンスタンダード”でネットワークにつながることの重要性を訴えてきたSun Microsystems。しかし、WindowsとIntelプロセッサによるデファクトスタンダード、Linuxによるオープンソースという2つの壁がSunの前に大きく立ちふさがってきた。

 この壁を打ち破るためには、やはりオープンスタンダードに基づき、情報を「Share(共有)」し、コミュニティに「Participation(参加)」できる仕組みの実現が必要と考え、2005年に開催されたJavaOneカンファレンスにおいて、「Participation Age(参加の時代)」到来を告げた。

 そこで、サン・マイクロシステムズの代表取締役社長であるDan Miller氏に同社のビジネスの現状と今後の戦略について話を聞いた。

--JavaOneで発表された「Share(共有)」と「Participation(参加)」というメッセージは非常に共感できました。

Miller Sunは、「Information Age(情報の時代)」から「Participation Age(参加の時代)」という新しい道を歩みはじめたのですが、この道は元々Sunが歩んでいた道だと言い換えることもできます。以前、Sunが強かった部分はどこなのかを初心に戻って分析し、その部分にもう一度焦点をあてることで再び強みを取り戻せると考えたのです。

Dan Miller(ダン・ミラー)
サン・マイクロシステムズ代表取締役社長 兼 Sun Microsystemsバイスプレジデント
1962年6月18日、米国コロラド州デンバー生まれ。米コロラド大学卒業後、NBI入社。1988年にSun Microsystemsに入社し、グローバルサービスプロバイダーストラテジーグループ担当バイスプレジデント、グローバルセールスオペレーションズ テレコミュニケーション米国市場担当バイスプレジデントなどを歴任。2003年よりサン・マイクロシステムズ代表取締役社長に就任。現在に至る。

--2005年末に発表した「UltraSparc T1」プロセッサも好評ですね。

Miller 開発コード「Niagara」と呼ばれていたUltraSparc T1は、チップ・マルチスレッディング・テクノロジ(CMT)を搭載した最新プロセッサです。CMTを簡単に説明すると、1つのプロセッサ上に複数のコンピュータを構成できる新しいアーキテクチャです。また少ない消費電力と放熱量、少設置スペースも特長で、エコロジー(環境保護)にも参加(Participation)しているのです。

 ユーザー企業の担当者から、“CMTによる性能の向上はもちろん期待しているけど、それ以上にサーバの設置面積が少なくて済むこと、放熱の問題を考えなくて良いことが気に入っている”という話しを聞きました。今やコンピュータそのものにかかるコストより、データセンターのエアコンに必要な電気料金のほうが高いという笑えない話もあります。

--Sunのビジネスの中心は今もハードウェアなのですか?

Miller ソフトウェアやサービスのビジネスも大きくなってきてはいますが、Sunのビジネスで最も大きな割合を占めているのはやはりハードウェアです。詳細な数字は話せませんが、現在ビジネスの約半分がハードウェア、次にサービス、そしてソフトウェアという順番です。

 Sunの未来は非常に明るいと思っています。その理由は、ユーザー企業も減っていませんし、パートナー企業も減っていません。また、ユーザー企業もパートナー企業も、Sunの製品や戦略を非常にポジティブに受け入れてくれています。我々が必要なのは、優れた製品を、いち早くユーザー企業やパートナー企業に提供することなのです。

--ハードウェアのビジネスが中心のSunがSeeBeyond Technologyを買収した目的について聞かせてください。

Miller SeeBeyondの買収がなぜ重要かと言えば、ハードウェアを販売していくビジネスという自動車を動かしていくためには、ソフトウェアという燃料が不可欠だと考えているからです。まずハードウェアを購入し、1年後にソフトウェアを購入するユーザーはいないでしょう。

 特に、SeeBeyondの製品は、Webサービスのような新しいテクノロジーと既存のレガシーシステムを効率的に統合することが可能になります。ハードウェアとソフトウェアのビジネスのちょうどいいつなぎとなるのがSeeBeyondのソリューションなのです。今後、SeeBeyondの製品群は、Sunのソフトウェアビジネスに大きな影響を与えるでしょう。

--2006年は日本版SOX法に関する注目が高くなりますが、Sunの取り組みについて聞かせてください。

Miller 日本版SOX法においてデータの蓄積は、重要な取り組みのひとつになります。日本版SOX法で求められる企業の透明性を実現するためには、データのすべてを蓄積することが必要です。昔は、データを保管しておきさえすれば良かったのですが日本版SOX法では、必要なデータに、必要なときに、迅速にアクセスできなければなりません。このような面からもSunにとってStorageTekの買収は重要でした。

 ビジネスガバナンスという分野は、Sunにとって新たなビジネスチャンスです。日本版SOX法や個人情報保護法などではセキュリティが共通な課題となりますが、データをサーバ側で管理し、シンクライアントの「Sun Ray」でアクセスすることで、高いセキュリティを実現することも可能です。

 今後は、コンプライアンスやガバナンスを含むビジネスソリューションと、セキュリティソリューションという大きく2つの分野に注力して行かなければならないと考えています。Sunは、すでに製品を提供するだけの会社からソリューションを提供する会社へと進化しているのです。

--そのほか2006年のIT業界では、どのような話題が注目されるのでしょう。

Miller 2006年は、ユーザが「コスト効率」と「次世代のサービスや品質」に重点を置くものと予想しています。Sunは、これらのニーズを満たすため、2005年12月に新たに市場に投入したUltraSPARC T1プロセッサに加え、2006年も絶え間ない研究開発(R&D)に基づく革新的な技術を市場に投入していくことを目指しています。

 また、サービスの面においても、顧客の要望が強いLinuxやWindowsのサポートといったサービスを強化することで、質が高く、幅の広いサービスを提供してい期待と思っています。

--2006年、Sunとしての目標を聞かせてください。

Miller 2006年はSunにとって「実践の年」でもあります。2005年後半に発表した新製品と関連サービスを2006年には積極的に展開していくほか、2005年に買収したStorageTek、SeeBeyond、Tarantellaなどの製品もSunのソリューションの一部に組み込んでいきます。

 Sunではまた、パートナー企業と共に顧客に革新的な技術やソリューションを提供していく計画です。新しいパートナーと新しい形態のアライアンスを形成することで、全く新たな価値を創造することを目指していきたいと思っています。

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