前出の2年生、出口さんは、「毎日通学途中に聞いているので、授業以上の効果が感じられる」と言い、同じく国際・英語学部1年生の山本美和さんは、「授業以外にもポッドキャストで英語のニュースを聞き、理解するよう努力している」と言う。iPodがあることで、学生たちも通学時間を語学学習の時間として有効に活用しているようだ。
現在同大学では、教材を学内のサーバ上に置き、学生が自由にダウンロードできるようにしている。アメリカでは、iTunes Music Storeの技術を利用した「iTunes U」と呼ばれる大学の教材配信システムが確立されており、大阪女学院に次いで2004年夏よりiPodを導入したアメリカのデューク大学や、スタンフォード大学、ミシガン大学などが同システムを利用している。加藤氏は「日本でiTunes Uが開設されれば、すぐにでも導入したい」と語った。
どの学校でも導入できるのか
iPodの導入以来、他大学や高校からの問い合わせが殺到しているという大阪女学院だが、こうしたシステムが導入できたのは、「ほとんどの教材を自主開発しているからこそ、実現できた」と加藤氏は話す。一般に販売されている教材の場合、内容を勝手にiPodにコピーしてしまうと著作権法に触れる可能性がある。大阪女学院では、語学教材を独自に開発しているため、iPodでの学習システムを容易に導入できたというわけだ。
また、新しい技術の導入にあたってはサポート体制も重要だ。大阪女学院では、iPodのサポート施設を設置しており、同施設内にてiPodの使い方のトレーニングや、iPodに入れる教材データのアップデートなどを行っている。
さらに加藤氏は、「導入だけでなく、授業と連動させる必要がある」と語る。学生にアンケートをとったところ、iPodの利用法として高い比率を占めたのが宿題での利用だった。ある授業では、宿題の90%はiPodで済ませているという結果が出たという。「やはり授業や課題でiPodを使う環境を提供しない限り、モノだけを配っても意味をなさない。大阪女学院ではもともと音声教材が多かったため、iPodが学生にスムーズに受け入れられた」としている。
今後の課題と広がる可能性
iPodと語学学習をうまく連携させた大阪女学院だが、加藤氏はiPodという新しいメディアを導入することで「(これまでのテープやCD教材とは異なる)iPodに適した教材作りも必要となってくるだろう」として、今後の課題を提言している。2年生の仲慶子さんも、「市販のCD-ROM教材をiPod用にデータ変換しようとしたが、コンピュータ上での再生にのみ対応していたため、iPodに入れることができなかった」と話す。加藤氏はこの点について、「今後こうしたCD-ROM教材の方向性が見直され、iPod対応の教材が普及する可能性もある」と述べた。
iPodを導入して2年が経過し、iPod1期生が3年生になろうとしている大阪女学院だが、「3年生、4年生になると専門的な講義も多いため、今後は講義をダウンロードできる環境を整えたい」と加藤氏は話す。「講義内容のダウンロードは、就職活動などで授業に出席できない学生にとっても有効。これはなるべく早く実現させたい」(加藤氏)
1期生に15GのiPodを配布し、2期生には4GのiPod miniを配布した同大学では、2006年4月に入学予定の3期生にiPod nanoを配布する予定だ。同大学ではすでにビデオ教材も用意されているため、最新版のビデオ対応iPodの導入も検討しているが、「学生の経済的な負担も考慮した上で、希望者にのみビデオiPodを提供したい」としている。すでにiPodを授業で利用している学生たちは、声をそろえて「ビデオ教材もiPodで見たい。もし今からでもビデオiPodに変更できるのであればぜひ使いたい」と述べていた。