「競合のパフォーマンス・マネージメントとの違いはスコープの差」とSASの幹部

山下竜大(編集部)

2006-05-19 13:21

 SAS Instituteは5月16日〜18日の3日間、スイスのジュネーブにおいて同社のユーザーカンファレンス「SAS Forum International Geneva 2006」(SFI 2006)を開催した。世界58カ国から2500人以上が来場した同カンファレンスでは、SASがEIP(Enterprise Intelligence Platform)ソリューションを提供することはもちろん、パフォーマンス・マネージメント・ソリューションも提供できる企業へと進化したことが発表された。

 そこで、SAS Internationalの戦略担当シニアバイスプレジデントであるAllan Russell氏に、パフォーマンス・マネージメントの現状やSASのソリューションの優位性、今後の展開などについて話を聞いた。

SASのラッセル氏 「SASのパフォーマンス・マネージメントは、十分に熟した、今すぐ実現可能なもの」と話すSASのRussell氏。

--SASでは、2004年にデンマークのコペンハーゲンで開催されたSFIでも“パフォーマンス・マネージメント”を主要なメッセージとして発表しています。今回の発表との違いを聞かせてください。

 2004年に発表した“パフォーマンス・マネージメント”というメッセージは、まだ未成熟なものでした。概念としては確立していましたが、いかに実現するかという具体性に欠けていました。しかし今回の発表では、十分に熟した、今すぐ実現可能な“パフォーマンス・マネージメント”というものを発表しています。

--もうひとつ、SASが発刊した「Information Revolution」という書籍に、情報革命を実現に導く5つのステップという話しが出てきますが、こちらも2004年に話しを聞いています。書籍は、それをまとめたものなのですか。

 「業務レベルでの情報統合(Operate)」「部門レベルでの情報統合(Consolidate)」「全社レベルでの情報統合(Integrate)」「最適化レベルでの情報統合(Optimize)」「革新的な情報環境(Innovate)」の5つのステップでInformation Revolutionを実現するという話しですね。

 1995年〜1996年にはすでに構想として持っていました。実際に考え始めたのは、さらにさかのぼって1970年代の学生時代からです。当時は、会社の中でコンピュータが使われていることも、コンピュータサイエンスという言葉も一般的ではない時代でした。私の父親でさえ、「コンピュータって何だ?」と言っていた時代ですから……(笑)。

 今日では、ビジネスの遂行においてコンピュータが不可欠であるということは、誰もが理解しています。しかし、何のために必要なのか、どのように使えば効果的なのかという話しになると同じような状況に陥ります。そこで、今日のコンピュータサイエンスにはどのような方向性があるのか、コンピュータをいかにビジネスで戦略的に活用するかを考えてこの書籍を共同で執筆しました。

 この書籍ではまた、ITの現場にいる人とビジネスの現場にいる人が共通の言葉で話すことができる環境を提供することも目指しています。ITの現場にいる人たちの“良い考え”は、ビジネスの現場にいる人たちにとって“良い考え”であるとは限りません。そこで、それぞれの立場の人が共通の認識で問題解決するにはどうすればよいか、正しい方向に導くことができるようになっています。

--「Information Revolution」という書籍のタイトルは、一見難しそうな本のように感じますが、質問に答えたり、クイズがあったり、評価シートに回答することで、情報統合のレベルが現状どの段階にあるかを把握できるなど、確かにビジネスの現場にいる人たちにも分かりやすそうです。しかし、本来高いコンサルティング料をもらえそうな内容を、安価な書籍で提供するのはノウハウの流出になりませんか。

 確かにノウハウの流出になるかもしれません。しかし我々は顧客に対し、明確なビジョンを伝えることも必要だと思っています。また、変化に対応するということは、言うほど簡単なことではないので、書籍だけで解決できるとも思っていません。多くの人たちは、何ができて、何ができないのかでさえ把握できていないことが多々あります。このような人たちに、門を開けてあげることも必要だと思っています。

--パフォーマンス・マネージメントという概念は、ほかの多くのベンダーも発表しています。SASでは、どのように差別化を考えていますか。

 SASと競合他社のパフォーマンス・マネージメントの違いは、スコープ(展望)の違いだと思います。

 たとえば、単なるレポーティングのツールによりパフォーマンス・マネージメントが実現できると言っているベンダーもあります。しかし、レポーティングだけでは、なぜレポートが必要なのか、それで何が分かるのか、という課題が残ります。そこで、戦略とプランニングにより、レポートの持つ数字の意味を理解することが必要になります。

 数字の意味が理解できたら、次にその数字を分析します。分析により思ったような数字でなかった場合には、何を改善すればよいかも含めての分析です。このように、レポーティング、戦略とプランニング、分析の一連のサイクルによるスコープを提供できるのがSASの強みです。また、すでに必要なコンポーネントも提供することも可能です。

--今後のパフォーマンス・マネージメントの展開について聞かせてください。

 パフォーマンス・マネージメントに限りませんが、戦略においては継続的な拡張や強化が不可欠です。具体的には、高い柔軟性や拡張性、使いやすさの向上など、やるべきことは数多くあります。常に改善されたソフトウェアを提供していくことが重要です。また、SOA(サービス指向アーキテクチャ)やWebサービスなどの業界標準技術を取り入れることで、ほかのシステムとの相互運用性を向上させていくことも必要です。

 業界標準を取り入れていくのは、既存のシステム統合において多くの課題を抱えている技術者が数多くいるからです。従来の方法では環境の変化にシステムの統合が追いつけないのが実情です。そこで、業界標準を取り入れることで、システムを変化に迅速に対応することが可能になり、分析能力を向上させることができるのです。

 たとえば、マーケティングキャンペーンを例に挙げてみましょう。ある企業が、キャンペーンを行ってみたが、あまり良い成果を上げることができなかったとします。キャンペーンがうまくいかないのは、リコメンデーションの問題が考えられますが、モデルを容易に変更できる仕組みを提供することで、良い結果に導くことが可能になります。

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