Jost氏はまた、次期バージョンとなる7.1の新機能にも触れた。
中でも、バージョン7で加わった新機能「ARIS Business Architect」は、バージョニング、WYSIWYGエディタを搭載したレポーティング、LDAP統合などの改善点を盛り込むという。バージョニングにより、ビジネスプロセスをバージョン管理できることから、アーカイブ、リリースサイクル管理などが楽になる。細かなBPMのチューニングが期待できそうだ。
Jost氏がもう1点強調したのが、プロセス管理のContorollingだ。「多くの企業がモデリングに目がいっているが、最も重要なのは管理の分野だ」とJost氏。管理はビジネスプロセスの効果を測定する分野となり、ビジネスプロセスが想定していた通りに機能しているかどうかを現状を把握できる。
同社のツール、「ARIS Process Performance Manager」では、CRMなどのアプリケーションを分析し、文書の流れやシステムが実行したトランザクションをベースにプロセスを生成できるという。
「KPIだけでは不十分だ。KPIにつながるプロセスから評価しなければ意味がない。データフロー、コミュニケーションなどの構造部分を評価できるのはわれわれの製品のみだ」とJost氏。
この分野では、米国企業改正法(SOX法)など、内部統制に関する規制に遵守する「ARIS Audit Manager」も提供している。これについてJost氏は、「規制遵守では、ビジネスプロセス、ビジネスプロセスのリスクを文書化することなどが要求される。遵守プロジェクトの8割はBPMといえる」と述べた。
ビジネスプロセスを中核としたスイートへ
IDS Scheerの戦略は、「ビジネスプロセスに関与する部分のみを提供し、実際の運行プロセスをサポートするソフトウェアでは、プロセスのプラットフォームを提供するベンダーと提携すること」(Scheer氏)だ。
技術側を提供するベンダーとは提携戦略をとっており、特に関係が深いSAPとは現在、SAP NetWeaverで協業している。ARISツールにNetWeaverのリポジトリ(Enterprise Services Repositry)とのインターフェースを持たせることで、ユーザーはプロセスとサービスで同じリポジトリを利用できる。
IBM、BEA Systems、Microsoftなどとは現在、BPELなどの標準インターフェースをサポートすることでやりとりを可能にしている。
「ビジネスプロセスはひとつしかないので、ビジネスレベルではソリューションは1種類、技術レベルではさまざまなベンダーのソリューションが混在する」とJost氏は、IDS Scheerが提唱する企業のITを表現する。
IDS Scheerは、この唯一のビジネスBPMソリューションベンダーの地位を維持するため、ビジネスルールエンジンを提供する英国のCorticonなど関連する各分野とも提携を進めている。
BPMは今後どのように発展するのか。それについてJost氏は、「現在、BPM、SOA、EA(Enterprise Architecture)、BPA(ビジネスプロセス分析)などはばらばらのトピックスだが、今後ビジネスプロセスを中心に4つが重なりあうことは必至だ」と述べる。
ここでの同社の戦略は、4つに対応する単一のソリューションを提供すること。
「業務アプリケーション分野と同じことがおこっている。ベスト・オブ・ブリード(寄せ集め)ではなく、インテグレーションが今後の方向性だ」(Jost氏)。
同社はこの見解に基づき、ビジネスプロセスを中核としたスイートの提供を目指す。SOAではすでに、「ARIS SOA Designer」を提供しているが、今後「ARIS IT Architect」として、ネットワーク、アプリケーションなどのITインフラ管理機能も実現する予定だ。
ARISがメタデータレポジトリとなり、ビジネスプロセス、ITアーキテクチャ、サービスに関するすべての情報を格納する。これを基に、ビジネスプロセスを管理し、アプリケーションを管理する。
なお、Jost氏は企業への“宿題”も提示した。SOAもBPMも、最終的には組織の変革が成功の条件となる。「プロセス主導アーキテクチャの実装だけでは不十分」とJost氏は言う。同氏はさらに、「ソフトウェアアーキテクチャと企業組織の両方がプロセス主導になることが成功の秘訣」と述べている。