情報の時代から共有と参加の時代へと進化を導くWeb 2.0

藤井彰人(サン・マイクロシステムズ)

2006-06-26 19:58

 「Web 2.0」という語句は、インターネットにおけるさまざまなサービスの基盤として発展してきたウェブの新しい活用法に関する造語だ。2.0というバージョン番号がついてはいるが、W3Cや、IEEEなどの標準化団体が仕様を定義しているような技術仕様ではなく、ウェブやネットビジネスの新しいコンセプトやビジネスモデルを総称する言葉として広く利用されている。これまでのウェブをバージョン1.0とすれば、現在起こりつつある新しい活用法をウェブのバージョン2.0として意味づけたのが「Web 2.0」の始まりとなる。

 それでは、「Webの新しい活用法」とはどのようなものなのだろうか。Web 2.0カンファレンスも主催しているTim O'Reilly氏の論文「What is Web 2.0」では、「Web 2.0ミームマップ」により説明されている。Web 2.0ミームマップからも、Web 2.0は全く新しい技術要素から作り上げられたものではなく、現在進行系の新しいウェブの動きを纏め上げたものであることがわかる。

ロングテール

 通常のビジネスにおいてよく使われる「20:80」の法則は、20%の主力商品がビジネスの80%をカバーする法則だ。しかし、現在のネットサービスにおいては、必ずしもこの法則が当てはまらない兆候がみられる。

 商品陳列スペースの制限が加わらず、検索エンジンによるニッチな情報のマッチングや、ITの活用による自動処理が可能となった現在では、これまでビジネス的に非効率で有望でないと見捨てていた市場の「長大な尻尾」の部分(ロングテール)でのビジネスを可能にした。小売のアマゾンや広告のグーグルがその例として知られている。

集合知(Wisdom of Crowds)

 集合知は、よくWikipediaや、オープンソースの例をもって語られることの多いキーワードだ。呼んで字のごとく「集団の知恵」という意味で、知識の多少に関連せず、集団の知恵は多くの場合正しい答えを導くという考え方といえる。対する言葉は、特定の専門家に依存する知恵や、衆愚という言葉だが、集合知に関する研究は、Web 2.0での議論が最初ではない。「みんなの意見は案外正しい」(James Surowiecki著)でも、多種多様な集合知の例が紹介されているが、物理制約の小さなネット上での集合知のさらなる活用が注目されている。

データ蓄積型サービス、マッシュアップ

 従来のIT産業では、さまざまなアイデアから、ハードウェアやソフトウェアといった形態でIP(知財)を製品化し、販売することで、ビジネスを展開してきた。インターネットの利用が格段に普及した現在では、ネット上のサービスとしてアイデアを具現化し、サービスとして提供する形態が増加している。IT製品そのものでなく、ITを活用したサービスの提供とサービスに伴うデータの蓄積に主眼を置くことにより、IT産業の対象とする市場が拡大しつつある。

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