【予想2】Mixi Enterpriseで企業内ブログ、SNSが盛況に
会員数が500万人を越えたMixi。次の一手でどう出るかが注目の的だが、法人向けに「Mixi Enterprise」を提供してくるというシナリオは考えられないだろうか。
企業にとっても、Mixiの存在は既に無視できないレベルに達しつつある。先日、とある大手企業のCIOが「Mixiに我が社のコミュニティがあり、様々な情報が飛び交って大きなリスクになっている。そんなことなら自社内でSNSを提供した方が安全だ」とおっしゃっていた。Mixiの利用を禁止している企業もあるが、自宅での利用は食い止められない。こうした受け身としての対応もありつつ、企業内ブログ、SNSの導入が進んでいる。
そこでもしMixiから大手企業に対して「あなたの会社に閉じたセキュアなMixiを無料でホスティングします。ユーザーIDの管理や投稿モニタリングも可能です。企業内のコミュニケーション活性化にいかがでしょうか?」と提案があればどうだろうか。
単なるSNSだけではなく、社内電話帳、Know-Whoの機能を付与することで、企業内の人と人とのコラボレーションを触発できれば導入効果も見えてくる。Mixiにとっては企業内のMixi利用が公認されることでページビューが倍増し、広告価値が高まる。
Mixi Enterpriseは企業内コミュニケーションだけでなく、企業間コミュニケーションにも展開できる。Mixiに入っている企業同士であれば、取引先との人脈管理をMixi上で行うことも可能だろう。ビジネス近況や新商品情報をMixiで広報するもよし、人脈をたどって知り合いを紹介して助けてもらうもよし。SNSのビジネス利用が本格的に進むかどうかは、今年明らかになるだろう。
【予想3】エンタープライズマッシュアップが本格化する
ネットサービスの利用拡大の反面、ファイルサーバやNotes等の社内情報基盤も引き続き使われる。結果、社内のアーキテクチャは多様化、分散化の方向に進んでいく。そこで、複数の多様化、分散化したシステムをあたかも1つのシステムのように有機的に連携させる……すなわち、Web 2.0の世界でいう「マッシュアップ」が注目を集めるようになる。2007年には、エンタープライズ分野でのマッシュアップの議論が本格化してくるはずだ。
システムアーキテクチャに関する議論は、昔から行われてきた。業務系システムではSOAの議論がホットだが、情報系システムにもその熱は波及している。90年代は統一プラットフォームですべてを実現する「スイート」の発想が主流であったが、それが現実的ではないと分かるとポータル、サーチという「表示レイヤ統合」がブームとなった。しかし、ポータルやサーチでは表面的な連携はできても、利用者の利便性を本質的に高める連携はできない。Web 2.0のように重要なコアデータをシステム間で相互に活用する……すなわちエンタープライズマッシュアップが、本格的に求められてくるのだ。
エンタープライズマッシュアップは、下図のようなアーキテクチャになるだろう。
アプリケーションレイヤでは、ファイルサーバ、Notes、ネットサービスなど、使いたい時に使いたいアプリが利用され「1:アプリのブロック化」が進んでいく。それを統合する形でポータルやサーチにより「2:表示レイヤの統合」が行われる。そして、アプリを効果的に連携させるために、データレイヤにおいて「3:コアデータのマッシュアップ」が行われる。
エンタープライズにおいてマッシュアップされるコアデータとは、どのようなものだろうか。最も注目されるのが、メタデータ、すなわちデータに付随する属性情報である。例えば、あるファイルに付随している商品名、顧客名、文書種類といった情報だ。メタデータをシステム横断で統一的に相互活用することで、利用者の利便性が向上する。次が、アクティビティログである。これは、誰がいつどんな活動をしたかの活動履歴だ。アクティビティログを使うことで、その人に最適な情報を最適なタイミングで提供できる。そして3つ目がアイデンティティ。すなわち、ユーザーIDのデータである。
皆さん気づかれただろうが、この3つのコアデータはGoogleが無料サービスを提供することで、全世界のユーザーから躍起になって集めようとしているものだ。このデータを使って、Googleは全世界の人にAdWords広告を届ける。Googleがマッシュアップしようとしている3つのコアデータが、エンタープライズシステムにとっても同様に重要である点は疑う余地がない。エンタープライズのコアデータは、Googleにマッシュアップされてしまうのか、それともエンタープライズが独自でマッシュアップして防戦するのか。その戦いの火ぶたが今年、切って落とされる。
未来を予測する最良の方法は……
さて、2007年の展望として、空想と独断で3つの予想を書いてみた。この予想が実現するかどうかについて、PCの父、アラン・ケイの言葉を紹介して終わりにしたい。
“The best way to predict the future is to invent it!”(未来を予測する最良の方法は、自分でやってしまうことだ!)
「Enterprise 2.0」は「起こるもの」ではなく「起こすもの」。私も、Enterprise 2.0に関わる一員として、予想を現実にすべく、今年1年を面白い年にしていきたいと思う。
筆者プロフィール:吉田健一(Kenichi, Yoshida)
リアルコム取締役、Chief Marketing Officer。一橋大学商学部卒。戦略系コンサルティングファーム、ブーズアレンのコンサルタントを経て、情報共有・コンテンツマネジメントソリューションを手がけるリアルコムの創業メンバー。同社ではコンサルティング・マーケティング部門を統括、ソニー、NEC、三菱東京UFJ銀行、ニコン、ファイザーなど国内大手企業の情報基盤戦略に関するコンサルティングを多数手がける。情報共有、ナレッジマネジメント、ポータル、次世代情報基盤などのテーマの第一人者。ZDNet Japanブログ、“「エンタープライズ2.0」への道しるべ”を執筆中。