OSSの現状とそのビジネスモデルとは--韓国からの報告 - (page 2)

小川陽平(編集部)

2007-01-16 17:22

 また、OSSのデベロッパーたちへの支援策も重要と語る。

 アメリカやヨーロッパのデベロッパーの多くはフリーランスで、自らコンサルティングをして収入を得ている。したがって、収入を得てOSSを作ったり改善したりすることができ、これが優秀なソフトウェアがアメリカやヨーロッパから数多く生まれてくる素地になっている。

 しかし、韓国ではそのようなフリーランスのデベロッパーが生き残ることは難しい。企業に勤めているデベロッパーが創造的な仕事ができるように、雇用側の企業と基金(編注:韓国ではOSS推進のための基金が設けられて運用されている)が契約し、通常の業務の時間を一部を基金が買い取るというというような方法も検討しなければならないのではないか。また、国内の有力なデベロッパーに対し、海外の有名なカンファレンスへ出席するための経済面での援助や、新しいアイデアをもつ若い世代へ積極的に活動を支援していく仕組みが必須だとSung氏は語った。

事業になる、仕事になる、商売になるOSS

 それでは、ビジネスとしてのOSSはどこを目指せばよいのか?

 Sung氏は「Software as a Service(SaaS)」という言葉をあげ、OSSを活用したビジネスモデルについて説明と提案を行った。

 まず第1に挙げられたビジネスモデルは、現在のOSSビジネスの中心となっているLinuxやApacheなどのテクニカルサポートやアーキテクチャのコンサルタントサービスだ。

 現在、こうしたサービスビジネスは競争が激化しており、Sung氏自身もこの事業をどのように拡大させていくか日々研究しているが、難しいマーケットだと痛感していると話す。

 そして、2つめとして提案されたのが、「Service Development based on OSS」と呼ばれるもので、インターネットのポータルサービスやオンラインゲームのポータルサービスなど、OSSを利用したサービスを提供して利益をあげるというものだ。

 Apache、Tomcat、MySQL、Eclips、Struts、Springなど、非常に広く使われているOSSは、このようなポータルサービスに適しており、これらOSSとの親和性が高いサービスに対し積極的に取り組むことは、結果的にOSSの開発能力向上につながり、最終的にビジネスとしてのハードルをクリアしやすくなるとSung氏は語る。

 その他、OSSを利用して数千台のハードドライブを1つのファイルシステムでまとめ、巨大なストレージとして利用できるようにすることで、ストレージボックスのコストを現在の5分の1程度まで圧縮することが可能になるサービスや、ターゲットマーケティングのサービスなどもOSSを利用することで、費用対効果の高いシステムを構築することができるという。

 Sung氏は、OSS活性化のためには、「OSSは利益を生み出せるビジネスモデルを構築できる」という信頼を得ることが絶対に必要で、それが最終的にOSS普及への近道だと語った。

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