マイクロソフトはVoIP市場を支配するのか? - (page 2)

文:Deb Shinder 翻訳校正:吉井美有

2007-01-30 08:00

Messenger対Skype

 Microsoftは「MSN Messenger IM」のバージョン7.0において、VoIPテクノロジを取り入れた。これは現在「Windows Live Messenger(WLM)」と呼ばれるものであり、このIMプログラムを利用すれば、PC間で音声通話を行うだけではなく、固定電話や携帯電話に電話を掛けることもできる。なお、「Windows Live Call」はLive MessengerのVoIP機能のことである。

 Messengerは、VonageといったVoIPプロバイダーよりも、Skypeを始めとするPtoP接続されたコンピュータで稼働するプログラムと真っ向から競合する。WLMではSkypeと同様、電話としての音声通話だけではなく、テキストメッセージングやビデオ通話も行えるようになっている。さらに、他のコンピュータには無料で電話を掛けることができるものの、固定電話や携帯電話に電話を掛ける場合には有料となるという点もSkypeと同じである。なお、WLM 8.1は現在、ベータテスト版が利用可能となっている。

 Verizonは、固定電話や携帯電話にWLMを介してVoIP電話を掛けるサービスを分単位の課金モデルで提供している。Microsoftはまた、WLMを利用する電話機の製造でUniden AmericaやPhilipsといった企業と提携している。同社はこれにより、USBや無線を利用するSkype電話機が既に市場で提供しているのと同様の「電話のような」ユーザーエクスペリエンスをもたらそうとしている。

 こういった電話機は、Windowsのプラグアンドプレイ機能を利用するようになっており、何のインストールも必要としない。このような電話機としてPhilipsの製品がある。この電話機は100ドル前後で販売されており、Messengerのコンタクトリストをダウンロードする機能のほかに、スピーカー通話機能やカラー液晶画面を備えている。

Microsoftの今後のVoIP戦略

 Steve Ballmer氏は2006年11月に東京で行ったスピーチにおいて、オペレーティングシステムからデスクトップアプリケーションにいたるまで、同社の全製品にVoIPテクノロジを2007年から組み込むという計画を発表した。

 完全に統合されたVoIPによって、まったく新しい可能性がひらかれることになる。将来的には、「クリックして通話する」ウェブサイトが当たり前になるかもしれない。また、モバイル機器向けのVoIPソフトウェアの開発が進めば、携帯電話とハンドヘルドコンピュータとの境界線は今よりもさらに曖昧になるかもしれない。Xboxのチャット機能では既に、ゲームプレイヤー同士がLive Communicatorのヘッドセットを用いて会話を行えるようになっている。

 大半の人が従来の電話回線網を利用しなくなり、音声コミュニケーションの大部分がインターネットを介して行われるという未来像を想像することは難しくはない。このような状況が現実になった時には、Microsoftが市場の大きな一角を占めていることだろう。

 しかし、もしもオペレーティングシステムやオフィス用生産性向上アプリケーションにVoIPテクノロジが組み込まれるようになったら、他のVoIPサービスは廃れてしまうことになるのだろうか?おそらくそうはならないだろう。VonageやLingoといった消費者レベルの代替サービス事業者は、サービスの構成をPCに依存していない。そしてPCに依存していないというその点こそが、多くの消費者が望むことであり、それには複数の理由が存在しているのだ。理由としては例えば、PCは頻繁にクラッシュする、あるいはPCを利用していない時にはその電源をオフにしておきたいといったことがある。

 では、Skypeといった他のPCベースのサービスはどうだろうか。VoIPを組み込んだMicrosoft製品によって駆逐されてしまうのだろうか?これも、おそらくそうはならないだろう。WindowsにおいてIMソフトウェアが無償で提供されたあとも、その他のインスタントメッセージングサービスは市場シェアを落としたとはいえ、駆逐されることはなかった。他のベンダーがMicrosoft製品にはない機能を提供したり、より高いパフォーマンスやより安定した動作を実現したりすることができている限り、あるいは一部のユーザーにとっては「ABM:Anybody But Microsoft(Microsoft以外であれば何でも)」という魅力があるだけでも、VoIP市場においてMicrosoftの競合が存在し続けることだろう。

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