誤解#4:Vistaの新しい点は見た目だけだ
OSの第一印象は、人に会った時の第一印象のように、見た目に左右される場合が多い。そしてVistaは、強烈な第一印象を与える見た目を誇っている。Glassインターフェースによる透明なウィンドウ枠や3Dアニメーションなどの視覚効果によって、これはまったく新しいWindowsシステムだとクリア(ガラスのことではない)に印象づけるのだ。
しかし、Vistaで新しくなった点は格好の良いインターフェースに留まらない。前述のセキュリティ強化策に加え、OSのさまざまな側面が見直され、再実装されたことで、使い勝手が向上するとともに新たな機能も提供されている。例えば:
- 検索機能が大きく拡張されている。これによって、「スタート」メニューに表示される検索ボックス1つを使うだけで、ドキュメントやプログラム、その他のオブジェクトを容易に検索できるうえ、アプリケーションの実行もできる
- 新しい生産性向上アプリケーションが組み込まれている。これには「Windows Calendar」と呼ばれるカレンダー/タスクリストプログラムや、「Windows Contacts」と呼ばれる改良されたアドレスブックも含まれている。こういったアプリケーションを「Windows Mail」(Outlook Expressの後継ソフト)とともに利用することによって、Officeを購入せずともOutlookとほぼ同じ機能を手に入れることができる。また、新たに組み込まれたアプリケーションとしては他に「Snipping Tool」といったものもある。Snipping Toolを使えば、「SnagIt」のようなサードパーティ製ソフトウェアをインストールしなくても、画面上の任意の範囲のスクリーンショットを容易に取得することができる
- 「Windows Explorer」が改良されたことで、さまざまなオプションを用いて、ファイルの整理や閲覧をより容易に行える。例えば、すべてのファイル(グラフィックファイルに限らない)のサムネイルを見ることができるし、ファイルをオープンしなくても「プレビュー」ペインでその内容を閲覧することができる(図A)
図A:Windows Explorerでは、ファイルをオープンせずにプレビューすることができる
Windows Explorerでは、必要に応じて自動的に水平方向のスクロールが行われるようになっている。また、ファイルを複数選択する場合には、従来のようにCtrlキーを押しながら選択する代わりに、チェックボックスを使用できるようになった。さらに、ユーザーエクスペリエンスをよりスムーズにするちょっとした工夫が数多くなされている。例えば、Windows Explorerでファイル名の変更を行うと、デフォルトではファイル名のみが変更され、拡張子はそのまま残る。
こういった機能は、Glassインターフェースでなくても利用できるVistaの新機能のほんの一部でしかない。
誤解#5:Vistaでは他のOSとのデュアルブート環境を構築できない
Vistaに関してわたしが聞いた中で最も奇妙かつ不正確な話は、「Vistaでは、従来のように1台のPC上で2つのOSを稼働させることができない」というものである。VistaとXPとのデュアルブート環境を構築したPCを2台使用しているわたしは、この話を聞いて驚いた。従来のバージョンと同じく、PCを立ち上げるとブートメニューが表示され、ユーザーはVistaかWindowsの旧バージョンのいずれかを選択することができるようになっている。
とはいえ、ブートメニューからXPをブートできるにもかかわらず、Vistaの「システム構成ユーティリティ」の[ブート]タブには、なぜかVista OSしか表示されないということが実際に発生している。XPと同様、システム構成ユーティリティにアクセスするにはコマンドラインで「msconfigat」と入力する。図Bは同ユーティリティを示したものである。
図B:Vistaでも他のOSとのデュアルブート環境を構築することは可能だが、システム構成ユーティリティの[ブート]タブ上には他のOSが表示されない
なお、従来Windows NTやWindows 2000、Windows XPでブート設定情報を編集する際に用いていた「boot.ini」ファイルがなくなっていることに気づかれた方もいるだろう。Vistaでは、ブートオプションは「Boot Configuration Data(BCD)」ストアに格納され、「Windows Boot Manager」がシステムを起動するようになっている。また、ブート情報を変更するには「Bcdedit.exe」というツールを使用することになる。
誤解#6:VistaにはOffice 2007が必要だ(または、同梱されている)
わたしは最近、権威のある全国紙で、Vistaの気に入らない点を執筆者が順に挙げている記事を読んだ。その記事では、Wordの「リボンバー」も挙げられていた。おやおや--それはVistaの機能ではなく、Office 2007の機能だ。どうも、執筆者がテストに使用したマシンにはVistaだけではなくOffice 2007もインストールされていたようである。
また、VistaをインストールするとOffice 2007へのアップグレードが必要になると書かれた文書もいくつか見かけたことがある。もちろん、アップグレードは可能であるものの、それは決して必要条件ではない。Office 2003はVista上で問題なく動作する。この誤った情報は、Vista導入の予想コストを大げさに語る記事でよく見かけるように感じられる。つまり、Office 2007へのアップグレードの費用も算入すれば、そういったコストを高く見せかけることができるというわけだ。
さらに、Microsoftは競合であるオープンソースのオフィス製品が実行できないようにVistaを作ったという噂もあるが、わたしの場合は逆に、「Microsoft Office」の代替ソフトウェアであるオープンソースの「OpenOffice.org」のインストール、実行において何の問題も発生しなかった(図C)。
図C:Microsoft Officeを購入したくなければ、無償のOpenOffice.orgをVistaにインストールすることができる