企業情報をブックマークする--その可能性と見えてきた課題 - (page 2)

平古場浩之(みずほ情報総研)

2007-04-04 08:00

ナレッジマネジメントプロセスにおけるツールの位置づけ

 このようにソーシャルブックマークは、企業がナレッジマネジメントや情報共有を行う上での情報の効率的な収集や取捨選択と、その結果に基づいた情報の整理、体系化を支援するツールとして大きく期待される。以下の表は、ナレッジマネジメントの各プロセスにおける定義と役割、またITツールの対応例についてみずほ情報総研が整理したものだ。

表2:ナレッジマネジメントモデルと各プロセスでの対応ツール



定義 これまでの対応
ツール例
Enterprise
2.0での
対応ツール例
これから扱う
対象、考慮
すべき内容
[1]

業務の遂行のた
めに情報を集め
て取捨選択する
情報収集、
発掘ツール
(BI、テキストマイニング)
ソーシャル
ブックマーク
トレンド、
兆し、
キーマンの
行動パターン
[2]

作成・収集され
た知識を保管・
蓄積していく
ナレッジ
データベース
イントラ
ブログ、社内SNS、
社内Wiki
公式見解、
よりどころ
[3]

膨大な蓄積情報
から目的の知識
を素早く探し出
検索エンジン ESP 絞り込み支援、
探さないで済むこと
[4]


膨大な蓄積情報
をわかりやすく
分類する
ナレッジ
マップ
ソーシャル
タグ、
タグ
クラウド
業務プロセスとの整合性
[5]

各ユーザーの業
務、役割、嗜好
に合った情報を
誘導する
企業情報
ポータル
ソーシャル
ブックマーク
(ソーシャルニュース)
フィード、
RSS、
スタート
ページ
プロジェクト管理、
ワークプレイス、
ユーザーID管理
[6]

情報や人、ある
いはモノをつな
げ、役立つ「知
識」を生み出す
きっかけを作る
ノウフー
データベース
イントラ
ブログ、社内SNS
映像・動画、
社外人脈
[7]


理解した知識、
使った情報をユ
ーザー自身の言
葉や経験として
血肉化する
Eラーニング、
Eテスト
イントラブログ、社内SNS 疑似体験、
シミュレーション
[8]

個人の頭の中に
埋もれている情
報や知識を表に
出す
Q&A、
ディスカッション
イントラブログ、社内SNS、共有ホワイトボード、インスタントメッセンジャー ブレスト支援、
内部統制
*ナレッジマネジメントの提唱者である野中郁次郎氏が発表したSECIモデルをもとにみずほ情報総研にて作成

情報を体系化する仕組み--タギングとタグクラウド

 ブックマークの際には、タグと呼ばれる分類キーワードを情報に付記するが、タグ付けを行ってきた結果は、分類キーワードが羅列された「タグクラウド」として表示される。この際、タグクラウド上では登録数の多いキーワードのフォントが大きく表示されるが、大小のキーワードが並んだタグクラウドを眺めることで、社員がどういったキーワードで社内外の情報を整理しているのか、あるいは企業全体ではどういったキーワードが特に注目されているのか、一目で確認することができる。

 企業内での利用時には、業務に直接・間接的に関連性のあるキーワードがタグ付けされると考えられる。このためタグクラウド上に表示されたタグ名称やフォントサイズの大小、タグ付けを行った社員とその所属とを分析することで、その企業における業務に情報が関連しているのか、また、業務や情報に社員や組織が紐づいているのか可視化される。

 このようなボトムアップ的な情報の整理、つまりフォークソノミーによって企業内の情報を体系的に整理するといった考え方は、情報管理者がトップダウン的に企業内の情報を整理していた従来のアプローチとはまったく異なるものだ。情報管理の視点ではなく、利用する現場視点で情報が体系化されることによって、情報の再利用が促進されると期待されている。

 こうした分析のもと、2006年後半より、わが社では一部の部署を対象にソーシャルブックマークの試行を開始している。次回は、半年程度の試行の中で見えてきた、本格的な導入に向けた課題とポイントを解説したい。

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