カネ、ヒト、時間いらずのIT内部統制--第3章:誰がファイルを読み書きできるのか(準備編) - (page 2)

木村尚義

2007-05-14 13:08

 一方、社内には積極的に共有すべき情報があり、その種類と数はかなり多い。

 ネットワークでファイルを共有すると、企画書や見積書など過去に作った書類を再利用できる。過去の書類を蓄積すればするほど、組み合わせが多彩になり、短時間で新たな書類を作ることができるようになる。もしも、そうした書類が散在しており、分かりやすい形で共有されていなければ、社員は同じような書類を個別に作ってしまうだろう。たとえば、ある会社で、社内に存在する書類を整理してみたところ、「FAXの送り状」が12種類も見つかったという。新たな送り状を作るのに、社員が1人平均30分かかるとして、この会社では、実に6時間もの時間をムダに使ってしまったわけだ。この場合、送り状のひな形さえ、分かりやすい形で共有しておけば、業務を大幅に効率化できたはずである。

 各クライアントPCにファイルが点在していると、それぞれのファイルを見たり操作したりする場合に、それぞれのクライアントで作業しなければならず、アクセス許可の設定が困難になる。そこで、クライアントPCにファイルを保存することをやめ、サーバの1カ所だけに、共有するファイルを保存するようにしたい。ファイルの散在を防げるだけでなく、セキュリティの観点からもサーバを集中的に保護すればよくなる。また、重要なファイルのバックアップも原則的にサーバに対してのみ行えばよいので、管理が容易になる。

なぜ、ファイルの読み書きに管理が必要なのか

 共有して作業を行う場合のファイル管理を簡略化するのなら、ファイルを「読める人」「書き込みができる人」にグループ化する。

 中小零細企業でよく見かけるのは、すべてのファイルに対して従業員全員が読み書きできる状態だ。しかし、全員がファイルを読めてしまうと、万が一情報漏えいが起きた場合に原因の特定が難しくなる。

 たとえば「個人情報が記入されているファイルについてはアクセスを制限する」という決まりがあれば、理解しやすいだろう。

 では、次のような場合はどうだろうか。

 取引の2つの会社、「A社」と「B社」がある。2社に見積書を提出することになったが、同じ製品なのに、値引き率が違う。これはよくあることだ。見積書には個人情報の記載がなかったので、特にセキュリティは考慮していない。誰でもファイルが読めてしまう状態だ。

 ある派遣社員が、たまたま見積書ファイルを開いてしまった。この派遣社員は以前、A社で働いていたが、今の会社の契約が切れると、B社に派遣されることが決まっていたとする。この派遣社員が、共有の書類を探すうちに、A社とB社の見積もりを見つけたのだ。値引き率が違う見積情報は、派遣先では非常に興味を持つことだろう。

 労働の流動化により、今後ますます起こりえる状況だろう。

 もちろん、契約によって他部署の書類を読んではいけないという、けん制はできる。しかしながら、ファイルが読み出し禁止になっていなかったら、正規の手段でファイルを読み出せてしまうのだ。防止策は必要である。

 あらかじめ、ファイルを読める人、書き換えられる人を限定することで、情報漏えいは未然に防げる。結果的に、会社内で情報漏えいの犯人探しをしなくて済むことになる。

 「知る必要のない人」には「ファイルが読めない」ことが、ファイル管理の大原則である。

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