「会議室の象」を働かすには--SOAがレガシーシステム有効活用の問題を解決する - (page 2)

文:Joe Gentry(CTO, Enterprise Transaction Systems, Software AG) 翻訳校正:大熊あつ子、小林理子

2007-06-12 12:00

ビジネスプロセスから始める

 SOAで前に進むことを決定したからといって、「全部かゼロか」と構える必要はない。実際SOAの場合、もっとも効果的な目標達成への道は徐々にステップを増やしていくことだ。SOA戦略を開始するにあたっての重要な点は、必要なビジネスプロセスのモデルを作ることだ。これによって、冗長性や改良すべき分野を分析し把握できるようになる。

イニシアティブをモデル化するプロセスでは通常、人とITシステムをビジネス戦略で連携させるテクノロジが必要となる。このようなテクノロジは一般に、ビジネスプロセス管理(Business Process Management:BPM)と呼ばれ、組織が実行可能なビジネスプロセスのモデルを作り、実行した結果を評価し、得られたデータを分析してプロセスを改善できるようにする。

 最適のプロセスが決定したら、そのあとは組織全体でそれを確実に実行することが重要となる。さらに、サービス品質保証契約(Service Level Agreements:SLA)を加えれば、特定のタスクを拡充して、確実に顧客を満足させることが可能となる。すべてのプロセスの実行状況をモニターすることで、改善を視覚的に捉え、プロセス状態に関して正確なフィードバックが得られる。

 特定のプロセスについてモデル作りが終了し、理解できたとして、次の作業は、そのプロセスに組み込むサービス、つまり特定の機能を定義することだ。ここで困難なのが、各サービスをどの程度きめ細かなものにするかの決定だろう。砂粒ほど繊細なものにするのか、それとも小石ぐらいの粗さにするのかということだ。

 サービスの繊細さを決める作業は、そのサービスが実行しようとするタスクに、どの程度の特殊性があるかを決定することにほかならない。あるサービスをさまざまなプロセスで再利用できる機会と必要条件が把握できれば、サービスの繊細さを決定するのに役立つ。

 SOAの利点は、きめの粗いサービスをひとつ構築することで、複数のきめ細かなサービスを活用できるところにある。BPMツールは、あるプロセスで利用されるすべてのサービスの定義づけを支援する。

象をガゼルに変える--サービス化

 ビジネスプロセスのモデルを作り、理解し、次に各プロセスを構成するサービスを定義づけしたら、既存のアプリケーションを再利用するのか、それとも1から新しい機能を作り上げるのかを決定しなければならない。

 ここで、本稿の最も重要な点になるが、いいニュースがある。新たなビジネス上の課題に早急に対応するために必要な機能の多くは、おそらく、企業のレガシーシステムのプログラムのなかにすでにあるのだ。

 つまり、ビジネスの中枢にあるレガシーシステムを分解して、SOAの情報「貯蔵庫」として情報を引き出せるものに変えることによって、これまでに投じた莫大な投資を活用できるということだ。このプロセスはサービス化と言われる。

 サービス化には、いくつかの補完的な手法がある。きちんと構造化された高性能が要求されるアプリケーションに最適なもの。あるいは、昔退社したプログラマーが残していった説明文書のない「スパゲッティコード」に代表される、誰も理解できないアプリケーションといったものに対処するのに最適なもの。さらには、SAPなどのパッケージ化されたソフトウェアアプリケーション専用に設計されているものもある。

 ビジネスプロセスを分析して最適化し、既存のレガシーシステムが有効に活用できるようになっても、ビジネス上さらに何らかの機能が必要になってくることはよくある。したがって、開発者が迅速に新たなビジネス機能を設計できるよう、非常に生産性の高いサービス指向の開発環境が必要となる。

 スピードとクオリティは、アプリケーション設計における2つの不可欠な側面だが、相いれないことも多いため、新しい開発環境はこの両方の要素を考慮に入れなければならない。

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