ブレードサーバからブレードシステムへ、その先にあるもの--特集:ブレードサーバ市場を探る(8) - (page 2)

柏崎吉一

2007-06-27 08:00

リソースプールを作る人と泳ぐ人

 従来の単体としてのブレードサーバは、安価でスケールアウト性に優れているものの、スケールアップ性や信頼性については、メインフレームやUNIXなどに見劣りしていた。そのため、ダウンが許されない基幹業務系システムにはメインフレームを、大量のトランザクションをさばく情報系システムのウェブサーバ用途などにはブレードサーバを、といった使い分けが一般的だった。

 だが、今日のようにハードウェアそのものの機能や信頼性の向上、ブレードの「システム化」が着々と進めば、ミッションクリティカルな領域での利用が進むのも時間の問題だ。HPなどは、インテルのItanium 2プロセッサを搭載したUNIXサーバ「HP Integrity」シリーズもブレード化しており、もはや各種プラットフォームを区別するための境界線は曖昧になりつつある。

 「ユーザーの視点から見るとITは、仮想化されたリソースとして、もしくはSOA(Service Oriented Architecture)技術によってオープンかつ緩やかに結合したビジネスサービスとして利用される存在になっていく。ブレードの普及と価格低下が相乗効果で進展し、コモディティ化することで、大きなリソースの集合体と見なされるようになる」と亦賀氏は述べる。ガートナーではこの考え方を、「テラアーキテクチャ」と呼んでいる。

 「リソースプールを海と見なせば、海を作る人、泳ぐ人、監視する人、そこで商売を始める人などが出てくる。新たなビジネスプレイヤーが登場し、産業構造を変えてしまう大きなインパクトが潜んでいる」(亦賀氏)。つまり、リソースがユーティリティ化され、ビジネスサービスがSaaS(Software as a Service)化されて、今まさに新たなプレイヤーが活躍しているのと同じだ。

 例えば、世界ではGoogleに引けを取らないウェブ上での新たなビジネスアイデアが次々と生まれている。それを具現化しているのは紛れもなく巨大なコンピューティングリソースだ。起業家らは自らの構想を実現させるための設備投資を惜しまない。ブレード製品は、社内に散在するシステムを統合、整理するだけのツールではない。オンラインビジネスなど新たな市場獲得のための武器として位置づけられるようになっているのだ。

 あなたは海を作るのか、それとも泳ぐのか。企業は、自らが何をコアビジネスとするのかを、あらためて問い直す時にきている。進化を遂げるブレードシステムが、その選択を迫っている。

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