SAPの「イマジニアリング」部門を率いるD・ブラウン氏

文:Dawn Kawamoto(CNET News.com) 翻訳校正:吉武稔夫、長谷睦

2007-08-24 19:45

 新プロジェクトに取り組むDenis Browne氏は、いわば「ミッキーの耳」をつけているような状態だ。だが、お待ちかねのミッキー(つまり、プロジェクトの成果)はまだ姿を現していない。

 企業向けアプリケーションソフトウェアの大手SAPが1年余り前に迎え入れたBrowne氏の肩書きは、イマジニアリング(Imagineering)部門担当シニアバイスプレジデントとなっている。そう、イマジニアリングだ。

 この用語は、ベビーブーム世代のミッキーファンならお馴染みだろう。Walt Disneyが「イマジニアリング」という言葉を初めて使用したのはもう何十年も前のことだ。

 しかし、その概念は企業向けソフトウェアの分野でも有効らしい。

 現在、Browne氏は10月にラスベガスで開催される「SAP TechEd '07」に向けてメディア各社への対応に追われているが、先ごろ、イマジニアリング部門の取り組みについて、最新情報を公開した。SAP Labs内に置かれた同部門の任務は、顧客の不満を解消するための長期的プロジェクトを明確なビジョンを持って展開すること、そうしたプロジェクトの実現可能性を検討すること、さらにはこれらのプロジェクトを今後1年半から2年の間に実行に移せるかどうか、評価することだ。

 イマジニアリング部門が精力を注いでいるプロジェクトの1つに「Harmony」がある。これはSAPの社内向けソーシャルネットワークサイト(SNS)だ。Harmonyは、SAPの従業員がSAPのあらゆるアプリケーションにアクセスする際、自分だけで情報を溜め込むのではなく、お互いに情報や関心事を共有できるようにすることを目的としている。

 4月の開設からこれまでに、北米のSAP Labsに務める従業員1700名のうち1000名がHarmonyを利用している。また、利用者のうち10〜13%はHarmony内に136あるグループのいずれかで、毎日活発に活動している。グループの1つ、ヨガグループでは、管理職を説得してヨガを行うための静かな部屋を用意させることに成功した。また、卓球グループは卓球台を3台獲得した。もしSAPがこのプロジェクトを商用製品に応用するつもりなら、従業員の福利厚生に役立つという以外にも、見込み顧客に勧められる利点を見つけ出す必要がありそうだ。SAPは、顧客関係管理(CRM)ソフトウェアの販売チームでもHarmonyを試験的に導入している。

 イマジニアリング部門は、企業向けウィジェットにも取り組んでいる。SAPとサードパーティによるマッシュアップによって作られるこれらのウィジェットは、従業員のコンピュータに押し寄せる情報やデータの大波に対処するために作られており、大量の情報の中からそれぞれのユーザーの手元に届けるべきデータを選別することに特化したものが多い。

 Browne氏によると、SAPはセキュリティをはじめとする問題が発生しないか、入念にウィジェットを検査しているという。問題としては、ウィジェットがうまく作動しなかったり、ユーザーのシステムの妨げになった場合の、顧客の苦情への対処などが考えられる。

 明らかに、SAPは顧客からクレームが出た際の対処法について、1999年の出来事から教訓を得たと言えるだろう。

 有名菓子メーカーのHershey'sは1999年、お菓子の需要が高まるハロウィーンのシーズンに、ソフトウェアの不具合のせいで受注処理作業に支障をきたし、収入が落ち込んだとして、SAPの受注処理ソフトウェアを非難した。オンラインマガジン「Baseline」の記事によると、「問題は、SAPとManugisticsのソフトウェアの連携にあった。両社のソフトウェアは連携して注文を管理し、顧客への出荷予定を立てることになっていた」という。

 Browne氏はさらに、フロントエンドソリューション「Duet」の開発におけるMicrosoftとの大規模な提携や、仮想世界にも関心を向けている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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