コンシューマITからSaaS、エコ、IT組織の再編まで--今後5年でガートナーが注目する4つの分野 - (page 2)

山下竜大(編集部)

2007-08-28 12:00

コンシューマITの活用が企業の競争力に

 これら4つの注目分野について山野井氏は、さらに次のように掘り下げている。

 まずはコンシューマITの分野だが、「コンシューマITでは、従来の企業システム以外のITにどれだけ企業が取り組めるかが鍵になる」と山野井氏。いわゆる、ブログやSNS、Wiki、タグなど、個人や消費者の分野で利用されている新しいテクノロジを企業システムに取り入れることで次世代のコラボレーション環境を実現。企業の競争力を強化することが可能になる。

 この分野において山野井氏は、「日本では、コンシューマITを企業システムに展開していくことは、他国に比べて速いスピードで展開される可能性がある」と話している。

 グローバルに見れば“日本語”という言葉の壁はあるものの、ある調査ではブログで利用されている言語の3分の1が日本語であるという報告もある。このことから、日本はコンシューマITを活用する下地は、他国に比べできていると考えることができる。

 山野井氏はまた、「携帯電話を活用したビジネスモデルの可能性も日本が最もエッジが立っている。今後どのようなアプローチでモバイル技術をグローバルに展開していくかは興味深いところ。また、携帯ビジネスのさらなる進化により、例えばグラミンフォンのように、発展途上の国におけるビジネス推進を支援することもできる」と話している。

 3番目のグリーンITへの取り組みは、メーカーの取り組みが中心になる。ガートナーの調査では、コンピュータ業界のCO2排出量は全世界の2%といわれており、これは航空機業界のCO2排出量とほぼ同等に匹敵すると言われている。

 「サーバやデータセンターにおけるCO2排出量が問題視されているが、実はPCをはじめとするクライアントデバイスからのCO2排出量も数が多いだけに大きな問題。PCやPDAなどのデバイスの熱効率をどのようにコントロールしていくかが大きな課題のひとつになっている」(山野井氏)

 日本はボランティア意識があまり高くない国ということができる。そのため、本当の意味でグリーンITが企業の競争力強化につながるにはもう少し時間が必要になるだろう。「ただし、3年後に考えたのでは遅いということも考えておく必要がある」と山野井氏は話している。

 さらに、企業のIT組織の変容について山野井氏は、「このメッセージが米国から出ていることが注目すべき点だ。米国ではCIOという職種が確立しているが、彼らの関心は、ビジネスよりもあまりにIT偏重となっているようだ」と話す。

 たとえば米国企業では、「Windows Vistaをいつ導入するか」という、現場レベルで行えばいい意思決定までもCIOの「関心の非常に高いトピック」となっていることが多い。今後、CIOやIT部門のマネジャーは、ビジネス部門との対話の機会を増やし、ビジネスプロセス設計や情報設計等の直接テクノロジとは関係のない貢献領域を増やすことが求められている。

 山野井氏は、「日本では依然としてCIOという専門職が明確に確立されていない反面、ビジネス部門を経験された方が、経営レベルで企業IT統括を兼務するケースも多い。CIOクラスの方が、ITを使う現場の状況を理解しているということは、決して悪いことではない」と話している。

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