AIRはアプリケーション開発の流れを支配できるか--アドビのウェブ技術戦略を聞く - (page 3)

文:Martin LaMonica 翻訳校正:吉井美有

2007-10-17 08:00

―これはデザイナーだけのためのものなのですか。

 そうです。これは、IllustratorやPhotoshopなどのツールを使っており、インターフェース設計に関する経験があり、誰かのために素晴らしい体験を作り上げたいと思う人のための製品です。このような人は基本的にデザイナーです。現在、彼らは開発者と協力しており、現在の仕事の流れは、まず構成をPhotoshopを作り、欲しいものを図にして、それを開発者に渡してそれに似たものを作ってもらうというものです。われわれは、この仕事の流れを既にある程度シームレスなものにしています。

 しかし、Thermoは、デザイナーがアプリケーションの外見を書くだけでなく、それに動きをつけて双方向性を加えることができるのです。

 Thermoでは、図に書き入れた要素を選択して、例えばこれがリストボックスを表すとか、テキスト編集フィールドを表すとかいうふうに指定し、この図を作業のコンポーネントに変換するロジックを加えています。

 アプリケーションを完成させるには、データを繋ぐ必要があります。ウェブサービスと接続し、XMLを読み込むということです。Thermoではそこまでは実現されていません。

―ウェブ開発に非常に影響力のあるGoogleの人たちは、彼らは可能な場合は常にFlashは避け、最大公約数的な技術であるJavaScriptやAjaxを使うと言っています。これが、開発者たちがAjaxを使っており、Flashや、ひょっとするとAIRを避ける問題になっているのではないでしょうか。

 いえ、それは問題ではありません。まず、AIRはAjax、Flash、Flex、PDFをサポートしています。ですから、これらのどの技術を使っても、AIRはそのコードを実行できるように設計されています。もしある開発者がAjax開発者であれば、AIRはその開発を完全にサポートし、一級品のアプリケーションを作ることができます。わたしがウェブに賭けているというときには、これはHTMLとAjax、FlashとPDFの両方を含んでいます。これらはすべて、ウェブ上で実際によく使われているものです。ウェブでアプリケーションを作っている人たちに関しての話ですが・・・これは正しい方向ですし、われわれはこれを可能にしていきます。

 わたしは、Googleにアプリケーションの設計に双方向メディアを使うことを考え始めてほしいと思います。特に、彼らはより洗練されたアプリケーションを作り始めていますから。アプリケーションのユーザーインターフェース設計の使いやすさについては、われわれはよりリッチなランタイム技術を提供することができます。また、どの程度インターフェースをリッチにするか、あるいは非常に単純なものにしておくかということについては、哲学的な選択の問題でもあります。

 開発の観点からは、ブラウザでJavaScriptを使うことはそんなに単純ではありません。これを行うためには非常に優秀な開発者でなくてはなりません。

―企業でこの種のアプリケーションが使われることについては、期待を持っていますか。

 AIRの価値命題は、エンドユーザーに対するものと同じように企業のものとも似ています。同じ技術を使ってデスクトップアプリケーションを配布することができますし、企業ではアプリケーションが配布されたサーバからそのアプリケーションを更新できることには大きな意味があります。ウェブと同じように、自動更新機能を持った新しいアプリケーションを作れば、この配布の問題は解決します。しかし、企業はデスクトップ用の統合ソリューションも欲しいと思っています。それは、ウェブアプリケーションでは失われてしまっています。

―Flashはウェブ上で支配的な動画フォーマットです。一方、Microsoftは今ではSilverlightを持っており、パートナーを集めています。リードを続けることはできますか。

 現在、Flashははるかに先を行っており、現在のところウェブではどんな技術もFlash並みに受け入れられることは難しいでしょう。われわれはウェブの初期から先行することができたし、現在の普及の姿はその賜物です。

 現在、Flashに機能が加えられると、1年以内に世界のクライアントの90%がアップデートされるという状況にあります。現在のところそのような状況にあるクライアント技術は、WindowsやInternet Explorerを含めて、他にはないでしょう。ですから、これに追いつくのは大変でしょう。

しかし、この状況に満足しているわけではありません。Flashチームは非常に速い速度で動いています。

―AIRにはどんな将来を期待していますか。2年後にはほとんどのアプリケーションはAIRで書かれているでしょうか。

 そうなっていてほしいですね。ほとんどのアプリケーションは現在ウェブ用に書かれていて、われわれはそれらのアプリケーションをAIRでデスクトップに持ってこようとしています。同じ目的のために使えるものは他にはありません。AIRは先行しており、これについてはリーダーになれると思います。Flashが先行し、双方向マルチメディアのリーダーになったのと同じです。

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