加速するビジネスインテリジェンス--その背景と市場の今 - (page 2)

柴田克己(編集部)

2007-10-19 20:06

今後は「OSIM」の戦い? さらなる伏兵も……

 ここへきて、これまでBIツール、BIプラットフォームを専業で手がけてきたベンダーだけでなく、マイクロソフトやオラクルといった総合ベンダーや、SAPなどのアプリケーションベンダーのBIに対する動きが活発化している。2007年3月のオラクルによるハイペリオンの買収や、10月に発表されたSAPによるビジネスオブジェクツの買収といったニュースは記憶に新しい。

 専業ベンダーも、これまで買収などを通じて製品のポートフォリオを広げようという努力は続けてきた。分析用のデータを収集するETLから、実際の分析、プレゼンテーションまでを一連のスイートとして提供しようという流れだ。しかしながら、現在では、総合的なソリューションを提供するベンダーが、そのスタックの中にBIを取り込もうとする動きが顕著である。

 生熊氏は、今後、広義のBI市場において中心的な役割を担っていくであろうベンダーの顔ぶれを「OSIM(オシム)」と表現する。これは、Oracle、SAP、IBM、Microsoftの頭文字である。

 「結果的に、この市場も総合ベンダー同士の戦いになるのは避けられないのではないでしょうか。システムのバックエンドからフロントエンド、さらにはコンサルまでを含めて提供できる点は、言うまでもなくユーザーに対する大きなアピールになります。専業ベンダーは、細かい部分の機能では優位に立てるとしても、さまざまなバリエーションを提供でき、価格面でも戦略的に競争力を高められる総合ベンダーと、正面から戦うことは徐々に難しくなるはずです」(生熊氏)

 生熊氏は、BI市場には、さらなる伏兵も存在すると指摘する。それは、Salesforce.comやNetSuiteといったSaaSベンダーである。

 「この先、BIのコモディティ化が進めば、それほど専門的でない、より安くて、簡易な機能を求めるユーザーも多くなるでしょう。そうなった時に、現在、SaaSで業務アプリケーションを提供しているようなベンダーの動きが、いわゆる“ライセンスビジネス”を本業としているベンダーのビジネスに、影響を与える可能性があります」(生熊氏)

 ビジネスのリアルタイム化と呼応するように、業務アプリケーションとの関係がますます密になりつつあるBIプラットフォームは、ユーザーにとって、今後、よりクリティカルなシステムとなっていく可能性が高い。ユーザーには、企業全体の戦略にのっとった長期的な視点での製品選択と、それを効果的に活用するためのリテラシが求められるようになるはずだ。

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