うつを早期発見するために--心の病と戦う技術者たち(2)

藤本京子(編集部) 2007年11月07日 20時17分

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 特集の1回目では、うつ病にかかった技術者3人のそれぞれのケースを紹介した。今回は、専門医の意見やさまざまなデータを元に、メンタルヘルスの現状や企業の対策について考えてみたい。

心の病は確実に増加傾向

 社会経済生産性本部が2005年に実施した「労働組合のメンタルヘルスの取り組み」に関するアンケート調査の結果によると、68%の労働組合が「心の病が増加傾向にある」と回答した。心の病のため1カ月以上休業している組合員がいる労働組合も、68.1%に上っている。心の病の原因として最も多かった理由が「職場の人間関係」(30.4%)だ。次に「仕事の問題」(18.6%)と続く。職場のメンタルヘルスを低下させる要因としは、「コミュニケーションの希薄化」を挙げる労働組合が49.9%と最も多い。

 「人間は情報処理をする生き物だ。処理可能なキャパシティを上回ると精神的に問題が起こる」--こう話すのは、企業向けメンタルヘルスサポートサービスを提供するアファリスの顧問医師で、財務省診療所のカウンセラーも務める栗原雅直氏だ。

 前回話しを聞いた3名の技術者たちは、仕事のキャパシティが処理可能な範囲を超えたというわけではない。ただ、自分の中で処理しきれない「何か」を抱えていたことは確かである。社会経済生産性本部のアンケートで心の病の理由として多く挙げられた「人間関係」も、うまく処理できなければキャパシティを超えてしまう。

 栗原氏も、「単に仕事が忙しいというだけでうつ病になるわけではない。原因はさまざまで、原因がわからないまま長期間うつ病と戦う人もいる」と話す。

 虎の門病院の精神科部長として務めた経験も持つ栗原氏は、長年さまざまな患者を診てきた。ひと昔前、IT業界で開発技術が日進月歩だった時期には、「プログラマーが昇進し、役職を与えられた際にうつ病に陥る人をよく見た」という。それは、新しい技術が日々登場し、新人の方が技術に詳しいというプレッシャーに加え、そうした部下を管理するという慣れない仕事が増えたことによるもので、「2つのストレスを同時に抱えている人が多かった」と栗原氏は言う。

 また、医療法人こころの会 精神科医 理事長の高橋龍太郎氏も、技術者の患者を多く抱えている医師だ。同氏は、技術者の傾向として、「根が真面目で仕事もとことんやる人が多い。また、技術者派遣として客先に出向いて仕事をすることも多く、顧客を相手にすることでプレッシャーやストレスが積もる可能性も高い」と話す。前回登場した中井さんも、復帰時に客先へと派遣され、高度のプレッシャーなどにより完全復帰を果たすことができなかったケースだ。

企業の対応は?

 少し古いデータになるが、2002年に厚生労働省が発表した「労働者健康状況調査」によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業や団体は23.5%となっている。特に、事業所規模が1000人以上の場合は約90%が何らかの対策に取り組んでおり、300人以上の規模では60%を超えている。

 その取り組み内容は、「相談(カウンセリング)の実施」が最も高く55.2%、次いで「定期健康診断における問診」が43.6%、「職場環境の改善」が42.3%だ。こうした取り組みを行う事業所のうち、産業医や保健師、衛生管理者など専門スタッフがいる事業所は約半数の49.8%となった。

 一方で、メンタルヘルス対策に取り組んでいない企業の割合は、事業規模が小さくなればなるほど高くなり、50人〜100人未満の企業では67.6%、30人〜49人規模では73.4%、10人〜29人規模では79.8%。つまり、ほとんどの企業で対策が進んでいないことを示している。

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