「トップダウン」と「ボトムアップ」の融合で真のPM実現を目指すマイクロソフト--加速するBI(3)

柴田克己(編集部)

2007-11-09 22:30

 マイクロソフトは11月、統合パフォーマンスマネジメント(PM)アプリケーション「Microsoft Office PerformancePoint Server 2007日本語版」の提供を開始した。

 企業における全社レベルの業績管理(パフォーマンスマネジメント)のPDCAサイクルを回していくために必要な「プランニング」「モニタリング」「分析・レポーティング」といった機能を統合した、ビジネスインテリジェンス(BI)のためのサーバシステムである。

 マイクロソフトではこれまでも、継続的にBIに対する取り組みを行ってきた。SQL ServerへのAnalysis Servicesの搭載や、Microsoft Office Business Scorecard Managerの提供、さらにExcel 2007におけるビジュアライズ機能の強化といったことが、その例として挙げられる。

 PerformancePoint Serverは、Business Scorecard Managerの後継製品であるとともに、ProClarityの買収で取得した分析ツール、さらに同社が独自に開発を続けてきたプランニングアプリケーションの機能を新たに統合したものである。いわば、これまでの同社のBIに対する取り組みの集大成であり、今後のBI戦略のベースとなっていく製品でもある。

 マイクロソフト、インフォメーションワーカービジネス本部、IWソリューションマーケティンググループ、エグゼクティブプロダクトマネージャの米野宏明氏は、PerformancePointに至るまでの同社のBIへのアプローチを、同社全体のコーポレートアイデンティティでもある「ビジネス現場における個人の生産性向上」であると説明する。

 しかし、企業におけるPMの視点に立ったとき、必ずしも個人の生産性「だけ」にフォーカスを当てることが最良の方法であるかどうかには疑問の余地が出てきたという。

 「PMの視点でBIを考えたとき、個人の生産性にフォーカスを当てすぎると、マネジメントの観点でのリスクは高くなる。さらに、個人の分析能力に対する依存が高い、従来のアプローチでは、BIというものが、データを分析したり、レポートを作成する“役割”を担った一部の人だけのものになる。そうした役割を与えられた人物が、本当にその企業の現場を理解し、本当に現場が必要としているデータを出せるかどうかは疑問と言わざるを得ない。現場で働いているスタッフが、ほぼリアルタイムに近いタイムスパンで市場の動きに反応しなければならない現代のビジネス環境において、そうしたアプローチは意味がないだろう」(米野氏)

トップダウンとボトムアップ--両アプローチを融合

 では、マイクロソフトが本当の意味で、全社規模のPMに役立つと考えているアプローチはどのようなものか。それは「トップダウン型」と「ボトムアップ型」の融合だという。トップからは、企業として社員全体の行動原則となるべき「戦略」が提示される。一方で、前線にいるスタッフは、その戦略を共有した上で、彼らがこれまで現場ではぐくんできた知識や経験を、それぞれの立場で出し合い、それをさらに共有していく。

 「たとえば、企業戦略としての“顧客満足度向上プロジェクト”があるとする。これには、営業、サポート、製造など、さまざまな部署のスタッフが関わることになる。しかし、それぞれの部署では、“顧客満足”という言葉が使われる文脈も違えば、それを見るための視点も異なるはず。しかし、“顧客満足度向上”という戦略がきちんと共有されてさえいれば、それを目指した活動を各部が行うことで、結果として、コミュニケーションは成立し、結果に結びつくのではないだろうか」(米野氏)

 米野氏の説明する、PMおよびBIに対するこの考え方は、いわゆる「ナレッジマネジメント」と呼ばれるものにも近いようだ。しかし、PerformancePointにおいて、全社戦略の共有、コミュニケーション、各スタッフの意思決定のために使われる「共通言語」は、Excelの上に表現され、SQL Server上で集中管理される「数値データ」となる。

 PerformancePointが実現する環境は、これまでトップダウンで与えられることがほとんどだったスコアカードや戦略マップを、現場のユーザーが、自らの手で最適と思う形にカスタマイズし、それを共有できるものだという。

 戦略を共有したすべてのスタッフは、PerformancePointを通じて、それぞれのチーム、そして個人の役割や状態を、一貫性のあるデータを元に把握できる。これは、いわば「意思決定」のイニシアチブを、部分的に現場側が手にすることにほかならない。

 刻々と変化する状況へのアクションを早めることによって、組織全体のパフォーマンスを上げていこうとするのがBIの目標のひとつであるならば、「トップダウン」に合わせて、この「ボトムアップ」のアプローチも企業のビジネスプロセスの中に組み込んでいくことが必要なのではないか。それがマイクロソフトがPerformancePointで行おうとしている提案である。

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