MIJS企業訪問(第23回)ラクラス--SaaSに結びついた“ソフトを売らない”ビジネス - (page 3)

宍戸周夫(テラメディア)

2008-01-30 12:00

MIJSへの問題提起

 ラクラスがMIJSに参加するきっかけになったのも、こうした新しいビジネスモデルへの思いがある。MIJSは今後の主要テーマとしてSaaSを上げているが、それに対しては独自のスタンスで貢献していく考えだ。

 同社ITストラテジー&ディベロップメント ディレクターの樋口博昭氏はこう指摘する。

 「オフィスソフトもフリーウェアでいいものがあるし、OSもオープンソースのものが出てきて、世の中全体的に買わなくてもよいソフトは買わないという時代になってきました。業務用ソフトでも、ネットワーク配信型で使えるものが出てきています。

 今日、IT技術者は不足がちです。一般の企業でITの専門家を採用することは今後ますます困難になり、社外のITサービスを利用するケースは増えていくと考えています。私たちはMIJSの中で、システムではなくサービスを提供するというビジネスモデルを訴求していきたいと思います」

 SaaSの具体的な課題としてラクラスが考えているのは、人事情報システムの要となる個人情報の扱いだ。MIJSの技術部会の主要なテーマは製品連携だが、個人の人事情報は単に他のパッケージと連携できればいいというものではない。

 北原氏はこう指摘する。

 「人事情報データベースを中心に据えて、他のシステムのユーザマスタとXMLでデータ連携することは、技術的にはいますぐでも可能です。また、懸念されている自動連携によるセキュリティの問題も、なんらかの技術的手段で解決可能でしょう。しかし、個人情報はそもそも誰のものなのかといった問題や、データ連携した場合にその取り扱いと責任範囲を契約書にどのように書き込むのか、といったビジネス上の問題はまだ議論されていません。こうした問題はMIJSの中でも提起していきたいですね」

 オーバーシーズについては「人事は国ごとの法律が関係するから、そのままでは無理」というものの「ビジネスモデルとして海外へ出て行くことは可能」と考えている。

 「アメリカにも当社のようなサービスはないそうです。給与計算サービス会社や人事情報DBのSaaSはありますが、これらすべてを統合した当社のようなモデルは珍しい。海外にパートナーがいれば、サービスとして出ていくことは可能です」

 やはり、サービスがラクラスの最大の特徴ということになりそうだ。

樋口博昭氏 ITストラテジー&ディベロップメント ディレクターの樋口博昭氏

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