「不連続かつ不確定要素の多い現代社会においては、過去の成功の延長上に将来の成功があるとはいえず、適時柔軟な対応が要求される。このような経営環境下に起こるさまざまな問題に迅速かつ的確に対応するための経営管理の仕組みが不可欠であり、BIへの要求につながっている」と中世古氏。
同社が行ったBI活用調査では、従来のBIの主要機能であるレポーティングの省力化だけでなく、問題を早期に把握し解決することを目的としたコミュニケーションの円滑化による業務精度の向上や、業務プロセスの改善や顧客満足度の向上のための業務改善/改革を実現する「戦略的なBI」に注目が集まっている。
それでは、BIを活用した戦略的な経営管理システムとはどのようなものなのか。中世古氏は、「経営者層向け、管理層向け、実務層向け、それぞれにPDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルを実現できるBIを実現することだ」と話している。
具体的には、経営者層向けには経営のコックピットとしての業績評価情報を提供する「経営情報ポータル」、管理層向けには予実管理・目標管理や差異分析ができる「OLAP」、実務層向けには客観的に状況把握ができる「レポート/アラート」などが有効になるという。
「従来のBI活用は、データを数値化し、集計することで全体把握、客観的判断を下すことを目的としていた。より戦略的なBI活用では、ろ過、凝縮により実態に迫り、因果関係や仮説、検証や対策が可能なPDCAサイクルを実現する“ガイドするBI”の実現が重要になる」(中世古氏)
ある小売業の事例では、10分ごとに販売実績、在庫実績を基幹システムからBIシステムにロードし、品目別、担当者別、売り場別、店舗別などの売上、在庫状況を可視化。状況に応じて、販売プロセスや購買プロセスにフィードバックすることで、商品補充、販売員の配置、在庫移動などを効率化した。
このシステムにより、店舗での売上/在庫状況をリアルタイムに把握し、刻々と変化する状況に応じた対策を実行することが可能になり、売上拡大と在庫削減を実現している。
中世古氏は、「戦略的なBIの構築には、まずBI構想の策定が必要となる。あるべき姿(グランドデザイン)を整理し、中期経営計画および目標達成への重点施策の再確認とBI活用のゴールの設定が必要になる」と話す。
また、あるべき姿と現状のギャップを整理し、BI導入のための計画やBI投資の計画を作成することが必要になる。しかし、「最も重要なのは、全社的認知とトップマネジメントのコミットメントの取得」と中世古氏は話している。
中世古氏は、「アビーム コンサルティングが提供するのは企業全体の経営革新。顧客が求める変革に不可欠なBI構築においても、充実したコンサルティングと変革に必要なすべての領域における最適なサービスにより継続的な成果を提供する」と話し、講演を締めくくった。