「コンセプトカーならぬ、コンセプトデータセンターを」--グリーンITのススメ - (page 2)

藤本京子(編集部)

2008-03-25 12:00

 IBMの取り組みに対しMines氏は、「ユーザーレベルでは、いまだ製品を選ぶ際にエネルギー効率よりもコストパフォーマンスを考慮することが多い」としながらも、「環境にやさしい製品であることをアピールしている点はすばらしい」と話す。「IT業界ではこれまでコストパフォーマンスばかりをアピールしすぎていたが、この数年でやっとエネルギー効率のよさを利点として売り出すようになってきた。ユーザーがグリーンな製品をあえて選ぶかどうかはまだわからないが、ベンダーがアピールすることでグリーン化が選択基準のひとつとして考えられるようになるだろう。これはいい傾向だ」とMines氏。

 ただし、同時にMines氏は「グリーンITに洗脳されてしまってはいけない」と警告する。言葉ばかりが先走り、今までと同じ製品であるにもかかわらず、環境にやさしい製品だとアピールするようでは意味がないというのだ。グリーン化を実現した製品と主張するのであれば、「実際に数字でエネルギー効率の高さなどを示すべき」とMines氏。最近では、ワット数あたりのパフォーマンスなど、エネルギー効率がスペック表に書かれていることもあるため、一般的な意識は高まっていると言えるが、Mines氏は「グリーン化への取り組みは継続的なもので、これができればグリーン化は完璧、といった指標があるわけではない」としている。

製品の寿命や社員の意識も念頭に

 グリーン化への取り組みは、エネルギー効率を高めることだけにとどまらない。Mines氏は、リサイクルしやすい製品の開発や、製品自体の寿命を長くすることも重要だと話す。製品をモジュラー化し、故障しても部品の一部を取り替えるだけで再度使える仕組みがあれば、必然的に環境にやさしい製品ができあがるのだ。

 またMines氏は、「データセンターなど、大規模システムのグリーン化にフォーカスしすぎると、その他でデータセンターと同様に膨大な電力を使っている部分を見逃してしまう」と警告する。それは、PCやプリンターなど、社員1人1人が使う機器のことだ。むしろ、こうした各個人にグリーン化を浸透させることは、一括して管理できるデータセンターのグリーン化よりも困難だとMines氏は話す。

 「技術だけではどうしようもないこともある。データセンターのグリーン化は、管理者だけが集まってグリーン化への意識を高めるだけでよい。しかし、例えば帰宅時にPCの電源を切るといったことをすべての社員に徹底させるのは意外に難しいものだ」(Mines氏)

 個人の意識を高める方法のひとつとして、Mines氏は「トップダウンで方針を押しつけるのではなく、社員の声を聞いてみてはどうだろうか。グリーン化のアイデアを社内で募集し、いいアイデアに賞金を与える方法もある」と言う。

 データセンターから個別のIT製品、そして個人個人の意識まで、グリーン化を推進するにはあらゆる分野でさまざまな取り組みが必要となりそうだ。

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