HG90を導入して、HDの高精細映像を活用しているのが、国立大学の愛媛大学だ。愛媛大学は京都大学とのタイアップで情報科学科の教材(デジタルコンテンツ)を制作しており、両者の協議には臨場感あるクリアな画質が必須と判断し、両大学にHG90を導入した。
ソニーマーケティングのシニアマーケティングマネジャーである武田有正氏によれば、「手元の資料やホワイトボードに貼った資料が、ズームアップすれば拡大鏡を通して見ているかのようにクリアに読み取れます。愛媛大学では授業でSDビデオ会議システムを使用されていますが、SDでは実現しえないクオリティである、との評価をいただいている」という。
しかしHDだけが必ずしも最良の選択というわけでもない。オールインワンタイプのTL33に設定された「キオスクモード」は、ビデオ会議システムの新しい用途を切り開いている。銀行における専門スタッフの遠隔相談窓口として利用するなど、インフォメーションセンターやコールセンターのサービス端末としての活用例がある。海外のショッピングセンターの事例では、言語別のインフォメーションデスクにつながる例もあるそうだ。
ソニーならではのソリューションもある。ビデオ会議システムとネットワークカメラを連携するものだ。たとえば技術部門と品質管理部門との会議において、リアルタイムに製造ラインをチェックして迅速に問題の改善を図る、といった使い方がある。
「工場のラインを見せたケースとしては、ある食品会社は投資家に対する新製品発表会の際に、地方にある工場内の様子を紹介するために活用されている」(武田氏)といい、これは映像力の広がりを示す例だと言うことができるだろう。
ユニークな活用例はまだある。IHI(旧石川島播磨重工業)は、G50と3CCD高解像度カメラを用いて、遠隔品質システムを構築した。これは、遠隔医療システムをヒントにしたもので、製造する機械の品質について、工場から遠隔地にいる設計部門へ確認箇所の映像を伝送し、状況を説明。設計部門でキズなどをチェックし問題の解決に当たるというものだ。
「このケースではG50のコーデックで伝送していますが、カメラ自体の品質が非常に高いため非常にクリアな映像で検査することが可能です。カメラの性能が高いほど映像のクオリティが明らかに高まることを示した例といえます」(同氏)。
ビデオ会議システムを常時接続するケースも増えている、と武田氏は話す。このケースでは、会議室同士をつなぐというよりも、空間と空間をつなぐといった使い方と言うことができる。
たとえば浜松に本社を置くシーエムエーでは、静岡の営業本部と本社とをTL33で常時接続している。日頃の打ち合わせにビデオ会議を活用するとともに、朝の挨拶など、社長が営業所の社員にひと声をかけるために使っている。「シーエムエーの社長様からは『おはよう』のひと声で一体感が生まれた、と伺っています」と武田氏。「社員の皆さんもビデオ会議で気軽に会話を始められているそうで、誰かが成功したり失敗した時に、ともに喜んだり励まし合ったりされているようです。ビデオ会議で心が通じ合う。これは私たちソニーにとって、たいへん嬉しいことです」と語る。
社員の気持ちが通じ合うようになる。ビジュアルコミュニケーションは、単に時間と距離を節約するだけのツールではない、ということだ。