レコメンド技術の未来の姿--ECサイトのレコメンド技術を考える(6) - (page 3)

高島理貴(ケイビーエムジェイ)

2008-07-16 08:00

 こうしてレコメンド技術は、リアルと融合した新しいネットマーケティングの世界をさらに大きく切り開き、技術的にはトランザクション処理の向上でより進化していくことが見込まれる。今後この技術が世の中のウェブサイトにはなくてはならない技術として浸透していくことはほぼ間違いないだろう。

レコメンド技術はどこに向かうのか

 さて、次に今後のレコメンド技術の展望について解説しよう。レコメンド技術の発展は2つの方向性を秘めている。1つは範囲の拡大、もう1つは精度の向上だ。

 現在のレコメンド技術は、特定のサイト内に限定して商品やニュース記事などをレコメンドしている。サイト運営者側は、ユーザーに運営サイト内を回遊してもらうことで自社商品の購入に結びつけたり媒体価値の向上を図りたいと考えているためだ。そもそも、訪れたユーザーが広告以外のサイトに離脱してしまうことや、運営サイト以外で目的を達成してしまうことは機会損失を意味する。

 だが、ユーザーが求めているものや関連商品が他の分野であったり、他のサイトにあることも当然ある。そのため、複数のサイトを運営するグループ企業間でのレコメンドや広告商品としてのレコメンドなど、サイト間をまたいだレコメンドの実現が期待されている。グループ間でのレコメンドではグループシナジーが発揮できる。また、他社サイトへの広告レコメンドは、サイト運営者が管理できないGoogle AdSenseと違い、コンテンツ連動広告がサイト運営者側で管理できるため、効果の高い送客が実現できる。

 一方、精度の向上において課題となるのは、情報の共有とコミュニケーションだ。この連載では、リアル店舗と比較することで、接客をイメージしたレコメンドを紹介してきた。リアル店舗での接客は、季節、天気、時間、時事問題などを共有しつつ、顧客の顔や風貌を認識し、その場でニーズを聞くというコミュニケーションが可能なのだ。

 例えばアパレルショップだと、その年の気候や流行を共有しながら、目の前にいる顧客の体形や現在の服装などで趣向を推測し、実際のニーズを聞きつつ顧客に合った服を勧められる。電気量販店であれば、デジタルカメラを探している顧客のニーズを聞きだし、息子の体育祭を撮影するのであればデジタルビデオカメラという選択肢もあると伝えられる。同時に簡単な操作説明もできる上、メモリーカードやカメラケース、さらには三脚や編集ソフトまで勧めることもあるかもしれない。このようなやり取りをレコメンド技術で実現するには、リアル店舗と同様に、その場でより多くの情報を収集し共有した上でコミュニケーションを図る仕組みが必要となる。

 範囲の拡大と精度の向上という2つの方向性をリアル店舗で実現しているのが「デパートコンシェルジュ」だ。デパート各社は、ECサイト以上に顧客増加が難しく、以前からリピート数や顧客単価の高いヘビーユーザーの開拓を目指したサービスの向上を図っている。デパートコンシェルジュの主な役目は、デパート内を横断的に案内し、状況に応じて顧客のニーズに合うものを探し出すことだ。そのために、顧客の時間の許す限り、相談をじっくり聞いて解決策を提案している。このように、「特定の顧客ニーズに合う案内」を実現することが、今後のレコメンド技術に求められる要素である。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]