「Notes/Dominoを使い続ける」という選択肢--企業のコラボレーション基盤を考える(2) - (page 2)

梅田正隆(ロビンソン)

2008-08-08 19:39

本当に必要な機能は千差万別

 同じくLotusDay 2008で「本当にLotus Notes/Dominoでなくても、あの製品で大丈夫?」と題した他社製品とNotes/Dominoとの比較デモを行ったロータス事業部の平塚博章氏は、「過去のNotes/Dominoは高級外車に例えられ、テクニックがない人はうまく乗りこなせなかった。しかし、Lotus Notes/Domino 8では、誰もがどこでも乗りこなせるようになる」と、そのメリットを訴える。

 同氏は、グループウェア製品を検討する来場者に対して、「製品説明やデモの第一印象で決めてはいけない」ともアピールする。“シンプルで高機能でWeb 2.0対応”といったうたい文句で、ブログ機能、SNS機能、Ajaxによるユーザーインターフェースなどを前面に出して強調する製品がある。だが、「必ずしもそれが使いやすさに直結するものではない」とする。この考えには頷ける。また、Notes/Dominoから別製品への移行を検討するユーザーに対しては、要件定義で様々な制約が発覚するケース、移行ツールを使ってもアプリケーションロジックの移行は無理なケース、運用管理が複雑になるケースなどを紹介し、クギを刺すことも忘れない。

 出荷が近い8.0.2では、ユーザーレスポンスが大幅に改善(約50%向上)されるとともに、標準機能の1つであるDomino Web Access(DWA)の「Ultralite」モードではiPhoneを含む様々な携帯電話に対応できるといった具体的な機能面でのメリットも強調した。

 そのほか、DWA 8では、ドラッグ&ドロップによる複数ファイルの同時添付や、フォルダごとの添付が可能になる。さらに、添付ファイルを含めた全文検索機能や、ドラッグ&ドロップによるフォルダの移動、複数のメールを選択しての一括操作、クリックによるメールの並び替えなどができる。さらに、Lotus Notes/Domino 8では送信済みメールを未読、既読を問わずに「回収」する機能が追加された。もちろん、回収できるのはLotus Notes Mailを使用する受信者に送信したメールに限られる。たしかにこれらは、Notes/Dominoリプレースを狙う他社のウェブベースのグループウェアには、あまり見られない長所かもしれない。

 IBM Lotusがアピールする新機能は枚挙にいとまがない。ただ、「ウェブベースでありながら、複数のファイルをドラッグ&ドロップで添付できる」としても、それが旧バージョンのユーザーにアップグレードを促す起爆剤となるかどうかは微妙なところだ。ユーザーが本当に求めているのは、Notes/Dominoをアップグレードして使い続けることを経営者に対して納得させられるだけの説得力を持つ新機能であり、それを下支えするベンダーとしてのビジョンやメッセージなのではないだろうか。その意味で、ユーザーが本当に必要としているものは千差万別に違いない。

 IBMは、R8移行のNotes/Dominoに続々と新機能を付加し、周辺アプリケーションを充実されることで、旧バージョンのユーザーたちもいずれアップグレードへ踏み切るだろうと静観しているのかもしれない。一方で、たとえ新しいOSの上で旧バージョンのNotes/Dominoが動かなくなったとしても、仮想化ソフトウェアを利用してでも動かし続けようと考えているタフなユーザーは存在する。Notes/Dominoが入り込んでしまったこの特殊な状況の原因のひとつが、Notesのコラボレーション基盤としての完成度の高さにあるというのは、皮肉な現実だ。ユーザーは、現状の機能に満足してしまっており、次々と提示される新機能に対しても「アップグレードのポジティブな理由が見つからない」と言う。IBMとしては悩ましいところである。

Lotusphere 2008 IBM Lotusでは、「Notes/Domino」自体の機能強化に加えて、連携が密な周辺ツールを多数リリースすることで、ユーザーの確保を図る。(画像をクリックすると拡大表示します)

では、Notes/Dominoを止めれば幸せになれるのか?

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