「レイヤとコンポーネント」への切り分けが情報基盤構築のトレンドに――企業のコラボレーション基盤を考える(6) - (page 2)

富永康信(ロビンソン)

2008-09-22 17:37

ITは「どう作るか」ではなく「どう使うか」の時代に

 吉田氏は、次の4つの変化を示す。

 第1には、業務のデジタル化が進み、社内で流通する情報量が増えすぎたことによる、「情報の質の低下」があるという(図1)。Notes以前の時代には、情報は「多く蓄積されればされるほどよい」とされていたが、デジタル化によって情報の作成や蓄積のコストが大幅に下がることによって、人間の処理能力を超えた量の情報が流通し、業務の質を低下させている。Notes利用企業では、増大したデータベース(DB)のごく一部しか利用されていないケースも多いという。ここで必要になるのは、流通するデジタル情報の「量から質へ」の転換である。

情報の質の低下 図1:IT化の進展にともなって情報の量が急増し、いつしか情報の質とスピードが低下している(出典:リアルコム)

 第2の変化は、グループ経営やM&A、グローバル化が進むに従い、社内に閉じた情報環境があまり意味を持たなくなってきた点だ。例えば、買収や合併、分社などを繰り返して、結果的にグループ会社が数十社にもなっているような企業の場合、複数のベンダーによるコラボレーション基盤が混在する環境になっているケースは十分に考えられる。それらを無理やり1つの基盤に統一することは極めて困難であり、現実的でもない。つまり、旧来の“企業内LAN”の枠を超えた情報共有のありかたを論じる段階になっているというわけだ。

 第3は、EUCの是非である。管理の行き届かないEUCが行われたことで社内に大量のDBが作られた企業では、DBの数だけ異なった種類のシステムを抱えるのと同様の管理コストが生じることになり、他に移行することもバージョンアップすることも困難になっているという現実がある。また、社会的に企業のコンプライアンスやガバナンスの強化が求められる方向にある現在、EUCの有効性を認めつつも、ある程度のコントロールを効かせた運用をしていこうとする企業が増えているのも事実だ。

 そして第4は、ITコンシューマライゼーションというムーブメントだ。ユーザーは、これまでNotesやExchangeといった大手ベンダーが有償で提供するコラボレーションツールを与えられ、それらを使ってきた。しかし、たとえば「Google Apps」のようなツールが登場したことによって「極めて低コストで同様の技術が利用できる時代になった」と感じ始めている。システム部門が旧来システムの管理に忙殺されている間に、社内のユーザーは個人でブログやSNSといった新たなコラボレーションのための技術を使いこなし、その体験を業務に持ち込むことが自然だと考えるようになりつつある。吉田氏は、「ITツールのコモディティ化によって、ITはどう作るかではなく、どう使うかという感覚が重要になっている」と指摘する。

「一枚岩」から「レイヤとコンポーネント」に切り分ける

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