グリーン化、高速化、柔軟性--20年後のデータセンターを予測する(後編)

文:David Braue(ZDNet Australia) 川村インターナショナル

2008-10-16 13:30

本稿は、データセンターのグリーン化に向けたこれまでのトレンドを追った「グリーン化、高速化、柔軟性--20年後のデータセンターを予測する(前編)」の続きです。

まだ残されている技術開発の余地

 長期にわたって確立された、その他のサーバの主要な構成要素についても、研究者たちが見直しに取り組んでいる。たとえば、開発されてからすでに数十年が経過した、高速かつ高密度なメモリアーキテクチャ「相変化メモリ(PCM)」チップの出荷が、IntelとSTMicroelectroinicsとの合弁会社であるNumonyxによって2008年4月から始められた。PCMは、現在の選択肢をかなり上回るレベルの高い性能が期待されており、規模の経済による効力が発揮されれば多くのアプリケーションでフラッシュメモリに代わるものになる可能性を持っている。

 ソリッドステートディスク(SSD)はハードディスクの代替となる技術で、オーストラリアのPlatypus Technologyが数年前に開発した。AppleやDellなどがノートブックのオプションとして提供したことを契機に、最近になって主役の座へと躍り出ている。

 SSDはキャッシュの改善された形としてサーバを導入済みの一部の人々から支持を得ているものの、コストの高さが応用分野を限られたものにしている。しかし、時間とともにコストが低下し信頼性が向上すれば(SSDが採用されたラップトップで信頼性について重大な問題が報告されている現状では特に重要な課題)、SSDはメインストリームになるだろう。

 だからといってハードディスクがすぐに姿を消してしまうとは考えられない。ハードディスクはあらゆるストレージ方式のなかで最も優れたコストパフォーマンスを実現できるからだ。この点こそが、ハードディスクメーカーが同じ大きさのディスクドライブに多くの容量を詰め込もうと努力を続けている、おそらく唯一の理由だろう。

 ただしスピードは課題の1つだ。現在の回転速度1万5000rpmの製品は機械的な実行可能性の限界に達していると、Parkinson氏は指摘する。SSDテクノロジの改良が続けばこの先の数十年の勢力図は大きく変わるだろう。SSDはデータセンターで、階層ストレージ管理(HSM)ソリューションの一次層としての役割において、きわめて頻繁にアクセスされる情報を保持するテンポラリストレージ(一時記憶)メディアとして落ち着くだろう。

光が照らす未来

 サーバアーキテクチャに関する最近の研究では、消費電力の低減、チップ設計におけるモジュール化とスケーラビリティの向上、そしてインターコネクトやメモリチップレイテンシのような恒常的ボトルネックの排除に焦点があてられている。

 研究者は現在のアーキテクチャの寿命を延ばそうとさまざまな工夫を凝らす一方で、次世代の研究ではサーバの設計をまったく新しい方向に導こうとしている。

 注目すべき点は、ファイバによる接続と光による伝送で、既存の電気的配線を置き換えてしまおうとする動きだ。多くの企業がこういった光ソリューションの開発に取り組んでいる。2008年3月にはIBMが、米国防総省が進めている「超高性能ナノフォトニクスチップ間通信(Ultraperformance Nanophotonic Intrachip Communication)」研究プログラムの実現を支えるような、大きなブレークスルーを発表した。

 光サーバインターコネクトに関心が集まっている理由は、電気が電線を伝わるよりも速く、光はファイバを伝わっていく、という単純な事実によるものだ。つまり、たとえばテレコムキャリアや大企業が高密度波長分割多重方式(DWDM)テクノロジの技術開発を進めて、光ファイバの伝送スピードを数百Mbpsから始まって、1Gbps、2Gbps、10Gbps、さらには驚くべきことに40Gbpsにまで継続的に向上させることができたように、類を見ないスピードとキャパシティが得られることを意味する。

 同様の技術によって、他の領域でも急激な改善が実現している。たとえば、データセンターのさまざまなストレージエリアネットワーク(SAN)装置を光ファイバにより接続するファイバチャネルテクノロジも、1Gbpsから2Gbps、4Gbpsへと短期間のうちに性能向上が図られ、現在はケーブルを変更することなく8Gbpsを実現できるまでになっている。こういったテクノロジがサーバ設計に取り込まれることで、将来にわたって本質的に性能が向上していくとともに、データセンター設計の基本にならざるを得ないトレンドとして、消費電力の削減が図られていくだろう。

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