フレパーがZDCで提供するサービスの中でやはり注目したいのが、仮想化プラットフォームサービスになるだろう。
仮想化技術でサーバを集約・統合するという大きな潮流となっているのは誰の目にも明らかだ。この潮流は、IT投資の最適化という目的が込められているわけだが、集約・統合したいとしても、サーバルームやデータセンターの中で数多くのラックにシステムを収めている大規模システムとなると、集約するための場所を探すだけでも大変な労力を要することになる。そうした大規模システムを運用している企業が、ZDCにシステムを集約できるとなれば、そのコストメリットは大きいものになるだろう。
今後始める事業のシステムを試験運用が必要となった場合に、サーバを購入して、そこからシステムを構成していくという労力やコストもバカにならない。こうした局面でZDCの試験運用サービスを利用すれば、試験運用にかかるハードウェアや時間などの諸々のコストを削減することができるだろう。
ZDCを利用するユーザー企業は、月額の利用料を支払うことになるが、料金の目安としては月額100万円(税別)から、としている。「iDCの契約などは1年の縛りがありますが、ZDCでは1カ月単位の利用ができます」(川口氏)。
改めて言うまでもないが、現在の企業活動はシステムに直結しており、さまざまなビジネスがシステム化されている。システムの増大や複雑化は、ハードやソフト、サポート要員、設置スペースなどデータセンターの運用管理にかかる維持コストは約4倍になると言われ、電力・冷却コストは約8倍になるとも言われている。そのおかげで、企業のIT投資の7〜8割は、既存システムの運用維持にかけられているという状況を招いている。
一方で、こうしたシステムの増大や複雑化は、ITガバナンスが効かなくなっているという事態ももたらしている。ITガバナンスが混乱しているために、企業活動をサポートするはずのシステムが、逆に企業活動の足かせになりかねないという事態すら起きつつある。
冒頭に指摘したような、これまでにないコスト削減圧力の下では、どうしてもIT投資は一律カットという判断を下しそうになるが、それでは長期的視点に立ったIT戦略を打ち出すことはできない。企業全体としてシステムの総所有コスト(TCO)を考慮した上で、既存システムの運用維持にかかるコストを削減すると同時に、将来のための新規システムの開発に必要となるコストを捻出していくべきである。そうした視点で考えると、このZDCでのシステム集約・統合という手段は、有効な対策の一つと分析できる。
「大規模なシステムであればあるほど、仮想化技術によるシステムの集約・統合はそのスケールメリットを活かすことができます」(川口氏)
今回のZDCでは基本としてSystem z10 ECでデータベース(DB)などの基幹系システムを担うとしているが、たとえばそのほかのウェブサーバやアプリケーションサーバ、メールサーバなどのシステムについては、フレパーが提携するデータセンターで各種サーバを運用することができる。この際も、ユーザー企業がそれぞれのサーバごとにデータセンターとやり取りする必要はない。ユーザー企業はZDCにワンストップで対応すればいいように配慮されている。ユーザー企業のITガバナンス確立という点を考慮したものだ。