「SaaSよりアプリ仮想化」--NTT東日本がマイクロソフトの「App-V」を採用した理由

谷川耕一

2010-04-08 11:00

 NTT東日本では、地域IP網へのアクセスを提供する「フレッツ」の利用者に対し、「フレッツ・ソフト配信サービス」というクラウドサービスを2009年12月22日から提供している。これは、フレッツ回線経由でユーザーにソフトウェアを配信し、月額単位の費用で利用できるようにしたものだ。NTT西日本でも2010年1月より同様のサービスを開始している。

 クラウドと言えば、いまならいわゆるSaaS型を思い浮かべるのが普通だろう。インターネット越しにサーバにアクセスし、そこで動いているアプリケーションをウェブブラウザから利用するタイプのものだ。しかしNTT東日本では、SaaSではなくアプリケーションの仮想化技術を利用したソフトウェア配信サービスを開始したのだ。

小野氏 NTT東日本 コンシューマ事業推進本部 ブロードバンドサービス部 アライアンス推進担当 主査 小野伯展氏

 NTT東日本では、2008年夏ごろから中小企業や個人事業主、一般コンシューマーにフレッツの利用シーンを拡大してもらうため、新たなサービスを検討していた。その際のキーワードの1つはSaaSだったと言う。とはいえ、日本におけるSaaSは大企業が利用するアウトソーシングのようなイメージが強く、「中小企業や個人事業主には向いていないと感じた」と、NTT東日本 コンシューマ事業推進本部 ブロードバンドサービス部 アライアンス推進担当主査の小野伯展氏は言う。

 「NTT東日本のメインのターゲットは、中小企業や個人事業主、そして一般コンシューマーです。こうしたユーザーに対し、どのようなSaaSが提供できるのかを考えました」(小野氏)

なぜSaaSではなくアプリケーション仮想化なのか

 大企業であれば、自社用にカスタマイズできるSalesforce.comのようなSaaSを利用するかもしれない。しかし、中小企業では購入したパッケージソフトをそのまま利用するのが普通だ。SaaSでも同様にカスタマイズなしで利用することが考えられる。また、月額料金のみで初期導入コストが抑えられ、バージョンアップやインストールなど運用の手間もかからないサービスが中小企業には必要だ。「その結果、ソフトウェアを配信する形のクラウドサービスに行き着きました」と小野氏は説明する。

 当初はもちろんSaaS型の可能性も検討された。しかしSaaSの最大のネックは、アプリケーションを提供するソフトウェアベンダーがWindowsベースのパッケージ製品の開発に注力しており、ウェブベースのアプリケーションを1から開発するのに大きな手間がかかることだった。また、パッケージアプリケーションを提供するソフトウェアベンダーは、月額料金制を導入するにしても費用を徴収する仕組みがない。こうした仕組みをベンダー独自で構築し運用するのも大きなハードルだった。そこで、「ソフトウェアベンダーが月額でソフトを提供するための基盤を作ろうと考えました」と小野氏。その結果生まれたのがフレッツ・ソフト配信サービスだった。

 このサービスで、実際の配信に利用されているのが「Microsoft Application Virtualization」(App-V)によるアプリケーション仮想化の技術だ。App-Vを利用することで、既存のWindowsで動くアプリケーションを仮想化してパッケージ化できる。そのパッケージをサーバから配信し、ユーザーが利用する。ユーザーは、利用の際にソフトをインストールする必要はない。配信された実行ファイルをそのまま実行できるのだ。

App-Vを選んだ理由

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