今回発表したカメラモジュールは、スマートフォンの広がりなどにより、モバイル機器の薄型、軽量化の進展とともに、カメラの高画素化、高画質化が求められているという市場変化に対応。画質を落とさずに手ぶれを抑える光学手ぶれ補正機能のニーズが高まるといった動きを捉えたものだといえる。
本道氏は「現在スマートフォンなどで利用されているカメラモジュールの主流は3~5Mのものであり、オートフォーカス機能とともにレンズを5枚使用するなど複雑な構造となっている。そのため、レンズやセンサーなどと光軸をあわせる精密な設計技術が必要であること、高画質化によってレンズ上に細かいゴミを発生させない部材の採用、ゴミを乗せない製造工程の確立、ゴミが乗っても取り除くことができる仕組みの採用などが求められており、その点で当社が長年に渡り培ってきた技術は他社との差別化(要因)になっている」と説明する。
続けて本道氏は「電子式手ぶれ補正技術は、補正用のダミー撮像領域が上下左右に10%ずつ必要になり、本来の有効画素数をフルに使えず画質が劣化するという課題や、補正用の処理が必要になることからタイムラグがあるという課題があった。一方で、光学式手ぶれ補正技術は本来の有効画素をフルに利用できるなど、こうした課題を解決できるものの、バネのような仕組みで内部のレンズのぶれを制御するメカが必要になるため、どうしても大型化するという弱点があった。これまでの方式ではモジュール全体を制御する形であったため、高さで2倍弱の大きさになっていたが、今回のカメラモジュールでは、新たにレンズ部だけを制御するレンズシフト方式を用いることで業界最薄を実現できた」とする。
シャープでは高さで5.47mmで8.5mm×8.5mmのオートフォーカス式の1210万画素カメラモジュールをすでに開発していたが、これに光学手ぶれ機能を搭載しながらも、高さはそのままにサイズを11.0×11.0mmに収めた。
シャープにとっては、携帯電話およびスマートフォン向けのカメラモジュールは、同社の強みが発揮できる事業領域のひとつであり、いわば隠れたトップシェア分野であるともいえる。
シャープというと、完成品ばかりに注目が集まるが、実はこうした技術的な強みがあることが見逃せない。