オラクルのハードウェア戦略を読む(前編)--オープン系システムの功罪を解く

田中好伸 (編集部)

2012-04-02 12:00

 歌手の竹内まりやさんは「幸せのものさし」(テレビドラマ『Around40~注文の多いオンナたち』主題歌)という曲の中で、独身女性の心情を「自由と孤独は2つでセット」と歌っている。では、企業のIT部門の心情を歌うとどうなるか? 多分「自由と“複雑”は2つでセット」になるのではないだろうか――。

 オープン系システムが主流となった現在、ユーザー企業は必要なハードウェアとソフトウェアを自由に選んで導入できるというメリットがある。だが、その反面、選んだハードウェアとソフトウェアを組み合わせた時に問題がないかどうか検証する必要がある。オープン系システムは常に複雑さがつきまとうことになる。

 この複雑さは、月日が経つにつれて、ますます拡大していく。技術革新によってハードウェアの低価格化が進むことで、業務のシステム化が企業内の至るところで進むようになっている。ITガバナンスの弱いところでは、ユーザー部門の発言力によってシステムのサイロ化も進まざるを得なくなっている。つまり導入後の運用段階の手間やコストも大きくなってしまっている。

仮想化が複雑さに拍車をかける

 オープン系システムでは、自由と複雑さがコインの裏表の関係のようになっているわけである。しかし、問題はここで終わらない。仮想化技術の普及でシステム全体の総所有コスト(TCO)がますます増大していくことになる。その動きが顕著になるのが、2000年代後半からだ。

 IDCが2011年6月に発表した調査によると、サーバの導入時のコストは1996年からほぼ横ばいで推移しており、物理サーバの台数は1996年から2007年まで伸びたが、2008年からはほぼ横ばいで推移している。物理サーバの台数が天井を打ったのに対して、仮想サーバが2006年頃から急激に台数を増加させている。詰まるところ、運用管理のコストが2006年頃から急激に増加することになってしまっている。

図 仮想化技術の普及が運用管理費の増加を招いている
※クリックすると拡大画像が見られます

 複雑さがもたらす運用管理コストの増大は、別な形でも表れてくる。年間のIT投資の7~8割が、既存システムの維持に回されるという事態だ。ハードやソフトのサポートに加えて、その“お守り”をするための人件費があるからだ。企業の次の成長につなげるための新規システムの企画などに費やすことができるのは、残りの2~3割しかない。当然こうした実態は、企業にとっては由々しき問題と映ってくる。

 そうした流れの中で注目されてきているのが専用機(アプライアンス)である。アプライアンスは特定の目的のために開発されたものだ。「コンピュータ、ソフトがなければただの箱」という言葉(川柳?)があるが、裏返すと、コンピュータという機械はソフトウェアさえあれば何にでも活用できる。そこでアプライアンスは、不必要な機能を削って、特定の機能を稼働させる(日本語で言う白物家電もアプライアンス)。

 アプライアンスは単に導入や運用管理がラクになるだけでも、IT部門に恩恵をもたらす。加えて性能も向上するとなれば、願ったりかなったりというところだろう。そうした視点で注目できるのが、日本オラクルが提供するデータベース(DB)サーバ専用機「Oracle Exadata Database Machine」だ(オラクル自身はアプライアンスという呼び方をしていない)。

異例のスピードで導入されるExadata

 2008年9月に開催されたイベント「Oracle OpenWorld(OOW) 2008」で初披露されたExadataは、2010年以降、日本企業に相次いで採用され、本格稼働している。2012年の直近だけを見てもアサヒビールを中核とするアサヒグループや医療品卸グループのフォレスト、1800店舗以上の加盟店で構成される食品ボランタリーチェーンの全日本食品が稼働させている。

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