CRM統合に挑む三菱東京UFJが「DB2 pureScale」を選んだ理由

柴田克己

2012-05-07 13:50

 企業の合併統合や業務改革の結果、似たような機能を持つシステムがサイロ型に並存してしまうケースは決して少なくない。この場合、スムーズな情報の共有によるサービスの質的向上や、運用管理コストの削減を目標に、可能な部分から順次統合を目指すことになる。

 こうしたシステムの統合にあたっては、処理能力の向上はもちろん、可用性や今後の業務の変化に対応できる柔軟性、拡張性が求められる。

 三菱東京UFJ銀行では、2010年より、社内に複数存在したCRMシステムの統合に取り組みはじめた。4月17日に開催された日本IBM主催の「Information On Demand Conference Japan 2012」では、三菱東京UFJ銀行システム部、基盤第三グループ上席調査役の井澤淳一氏が「CRMシステムの統合と効果 DB2 PureScaleによる高可用性基盤の実現」と題した講演を行い、システム統合の効果と、その実現にあたってIBMの基盤製品群がどのように適用されたかについて説明した。

出自の異なる4つのCRMを1つの基盤に統合

三菱東京UFJ銀行の井澤淳一氏
三菱東京UFJ銀行の井澤淳一氏

 三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)の一員である三菱東京UFJ銀行の従業員数は約3万5000人。国内773カ所に支店を構え、約4000万の口座を抱えている。金融業界の再編による合併や制度変更などを経て、同銀行には「目的別に複数の個人顧客向けCRMシステムが存在するようになった」という。

 並存したCRMシステムは、それぞれ「RMS」「FIRST」「S-CRM」「お客様ナビ」と呼ばれている。「RMS」は、営業店窓口やコールセンター向けの店頭顧客セールス支援システムである。一方の「FIRST」は、運用性商品販売時の顧客保護・法令順守体制強化を目的としたもの。さらに「S-CRM」「お客様ナビ」は、いずれも富裕層向けのCRMシステムとなっており、前者は富裕層向けの案件管理、後者はポートフォリオ分析といった役割を担っている。

 これら4つのCRMシステムは、それぞれに出自が異なり、ハードウェア、ソフトウェアの構成のみならず、扱う顧客情報の範囲なども異なっている。これらのCRMシステムを統合するにあたっては「システム課題」「業務課題」「システムに対する要件の変化」といったさまざまな背景があったという。

 システム的な課題としては、機器の保守期間の終了や性能的な限界への対応、保守コストの削減や障害時のサービス停止時間短縮への要請といったものが上がってきていたという。また、業務面での課題には、現場での営業フローとシステムフローとの乖離の是正や、二重入力や鮮度低下によるデータ品質の悪化を防ぎたいというニーズがあったとする。

 また、CRMシステム自体への要件の変化もある。CRMシステムのひとつであるRMSは、2004年にリリースされたが「当時は、いくつかある情報系のうちのひとつといった認識」だったという。現在では、CRMの重要性が高まり、システムにもそれに応じた可用性やスピードを求められるようになってきたとする。

 これらを踏まえ、CRMシステムの統合プロジェクトにおいては、「堅牢で柔軟なシステム基盤の構築」「業務の効率化とサービス向上」「コスト削減」といった目標が掲げられた。

 プロジェクトは、最も多くのデータを保有しているRMSをベースに4つのCRMシステムのデータベースを統合する方針で進められた。また、統合のためのシステム基盤においては、障害や突発的な負荷増大に「自律的」に対応できる仕組みを導入したいと考えたという。その実現にあたっては、IBMが提供する最新のソフトウェアとハードウェアを導入することを決定した。

 井澤氏は「本来、銀行などの金融業界では既に実績がある枯れた技術を採用する傾向にあった。しかし今回については、最新のものを採用しなければ、最新のビジネスニーズにキャッチアップできないと認識を変えた」という。

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