富士通、ヘルスケア事業で売上高2000億円目指す--5年間で300億円を投資

大河原克行

2014-03-18 14:51

 富士通は3月18日、ヘルスケア事業で2018年度に2000億円の売上高を目指す計画を明らかにした。2013年度の売上高実績は1075億円となっており、今後5年間で2倍を目指すことになる。社長直轄組織として2013年12月21日に設立した未来医療開発センターを通じて、2018年度には700億円のビジネスを創出。この分野に向けて2014年度から5年間で300億円程度の投資を計画していることも示した。

 富士通は、1975年から医事会計システムなど医療分野での業務効率化に取り組み、1986年にはオーダリングシステムで院内業務を効率化したという。1996年には電子カルテシステムで院内全体の情報共有に取り組んだ。2006年以降は地域医療連携で地域全体の医療情報の共有に取り組んできた経緯がある。

ヘルスケア事業の売上計画 ヘルスケア事業の売上計画
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 これまでについて未来医療開発センター シニアバイスプレジデント(SVP)の佐藤秀暢氏は「電子カルテシステムでは、国内で32%のシェアを獲得して第1位。大学病院では48.6%と圧倒的なシェアを持つほか、クラウド型の地域医療ネットワーク『HumanBridge』は全国展開し、広域医療ネットワークの導入を促進している。治験業務支援システムの『DDworks21』では85%のシェア、安全性情報管理システム『パーシヴ』では60%のシェアを獲得している。韓国、中国では地場企業との連携ビジネスを展開、欧米ではコンサルティング、データセンター管理などを中心に展開している」と振り返った。

 「理化学研究所との共同研究による細胞診断システムでは超微量の血液や唾液、汗などから健康状態を診断できるようになる。がんの診断や治療、健康アドバイスに役立てる代謝マッピングデータベースの構築で新たながん治療の可能性を高めることができる。そのほかスーパーコンピュータを活用したIT創薬では、驚異的なヒット率で医薬候補化合物を創出できる」(富士通 未来医療開発センター SVP 松本俊二氏)

心臓シミュレータ
心臓シミュレータは鼓動を心筋レベルから再現できるという

 富士通が東京大学大学院との共同研究で開発した心臓シミュレータでは、世界最速だったスパコン「京」の約90%の性能を利用して、約11時間で拍動1回を計算。心臓の鼓動を心筋レベルから精密に再現することで、診断精度を高めて術式の効果や予後の予測に活用できるという。

 「将来的には心臓シミュレータの機能をクラウドで提供し、多くの病院で利用できるようにしたい」(富士通 ヘルスケア・文教システム事業部本部生体シミュレーション開発室 室長 門岡良昌氏)

合田博文氏
富士通 執行役員 合田博文氏

 薬事法の改正に伴い、今後はソフトウェアなどを医療機器として展開することも視野に入れているという。

 執行役員の合田博文氏は、「統合医療情報システムに取り組んできた経緯、それに先進技術を組み合わせることができるのが強み。こうした経験をもとにヘルスケアに関連する長期的な技術開発を活用するとともに、ゲノム情報や健康情報、日常生活情報、電子カルテ情報を統合、解析した医療ビッグデータの情報基盤を構築し、個別化医療、再生医療、先制医療、診療支援、研究、創薬に次世代医療ICTに取り組んでいく」と語った。

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