著作フリーでも十分な利益--オープンデータが変える電子書籍ビジネス

江口晋太朗

2014-05-02 07:30

 日経ビックデータラボは4月22~23日、ビックデータに関するシンポジウム「Big Data Conference 2014 Spring」を開催した。活用事例や知見などをビックデータ活用企業や研究者が公開している。

 「コンテンツビジネスの新たな収益〜オープンデータの可能性〜」と題したセッションでは、佐藤漫画製作所代表取締役社長で、電子書籍基盤「漫画 on Web」を設立した佐藤秀峰氏、国際大学GLOCOM主任研究員でOpen Knowledge Foundation Japan代表の庄司昌彦氏が登壇した。

オープンデータ時代のデータ活用のあり方を模索する


国際大学GLOCOM主任研究員 庄司 昌彦氏

 庄司氏は、始めにオープンデータの概要について説明。オープンデータとは、営利/非営利に関わらずに自由に誰でも利用できるデータのことを指す。オープンライセンスで編集加工しやすいデータ形式であり、技術的にオープンであることが求められる。

 「オバマ大統領が2009年に就任した際に『透明性とオープンガバメントに関する覚書』を通じてオープンデータを推進し、2013年にはG8がオープンデータ憲章を批准するなど、国際的にオープンデータを推進する動きがある。日本でも、政府の「世界最先端IT国家創造宣言」などを通じ、政府のデータポータルサイトを設立し、オープンデータユースケースコンテストの開催などの事例がある」(庄司氏)

 オープンデータも含め、データ活用には、データ公開による収益性やインセンティブ、データを活用した創造性のバランスが重要である。電子書籍の登場やネットの普及などによって、ユーザーのコンテンツの楽しみ方も多様化している。こうした状況に対して、現行の著作権ではなく出典明記や営利/非営利、派生コンテンツなどのライセンスを著作者側が規定した上で、自由にコンテンツを利用してもらうクリエイティブ・コモンズも登場し、コンテンツの権利を柔軟に対応できるようになった。

 こうした状況を踏まえて、データを活用した経済効果のパターンとして、コンテンツを無料配布してライブやグッズでビジネスにするモデルや、外部に積極的に共有することでオープンイノベーションを促進し、自社の開発に寄与する方法もある。コンテンツを軸に新しい市場を作り、提供データの利用者を多く作ることでエコシステムを構築することも可能だ。近年の同人市場など、模倣や自由利用による新興企業や個人の育成にもつながるかもしれない。

 「欧米では、オープンデータによる直接的・間接的な経済効果は1400億ユーロと言われている。日本でも、5兆4000億円規模の経済効果が見込めるとしており、データを共有し、誰もが利用可能となる環境を作ることでさまざまな可能性があるのではないか」(庄司氏)

 著作をフリーにしたことで、7000万円以上の経済効果

 佐藤氏は、2002年から2006年まで講談社の『モーニング』にて『ブラックジャックによろしく』を連載。出版契約が切れたことをきっかけに、2012年9月15日から同作品を著作権フリーにし、タイトルと著作者名を明記し、利用したら事後報告をルールに誰でも二次利用可能にした。

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