国際競争力が高い企業の共通点
飽和する国内のICT市場と外国企業の市場参入により、事業のグローバル展開を模索し、試行錯誤をしている企業も多いだろう。では、グローバル展開で成功を収めている企業にはどういった特徴があるのだろうか。
ボストン コンサルティング グループでハイテク・メディア・通信グループの日本のリーダーであるパートナー&マネージング・ディレクター、東海林一氏に欧米系のプレーヤーに押され気味な日本企業の課題や求められる要素について話を聞いた。
ボストン コンサルティング グループ パートナー&マネージング・ディレクター 東海林一氏
まず最初に「欧米系のプレーヤーの活動が非常に盛んに見える一方で、日本企業は全体としてはやや活発さが足りないという見方がある。だが、決して技術力やシステムのアーキテクチャで負けているわけではない」と、日本企業の衰退を否定した東海林氏。今問われているのは、事業を展開していく力や市場を開拓していく力、人の変革力といったビジネスのやり方の部分だと指摘する。
Squareのモデルに注目
次に、国際競争力が高いと言われているICT企業の共通点として3つのポイントを挙げる。1点目は、単発売りではなく、垂直統合型のビジネスモデルを構築できていることにあるとする。
「例えば、Amazonで言うと、Kindleは端末も含めてユーザーインターフェースを高次元に高めて、ビジネスモデルを成立させた。タブレットを例にすると、単にタブレットをデバイスとして提供している企業は基本的にはグローバルでは成功していないことが多い。 “サービス”と一体になった部分が競争優位性につながっている」と分析。
その上で「世界で一番最初に垂直統合の仕組みを作ったNTTドコモの“iモード”に代表されるように、縦軸にも収益構造が得られるような新しいビジネスの創出を考えていくべき」と助言した。
次に、こうした既存にないまったくの新しいビジネスモデルとして成功を収めた最近の事例として、スマートフォンでクレジットカード決済を可能にした「Square」を挙げる。スマホに決済用の小さな専用端末を取り付けることで、安価に個人間でもカード決済を可能にした仕組みだが、このサービスの優れた点を次のように語った。
「このケースの特筆すべき点は、ユーザー基盤もネットワーク自体もゼロから作るのではなく、既存のインフラを活用している点。例えば、バックボーンのネットワーク自体は従来からあったクレジットカードのネットワークを利用しているので、セキュリティに関しても従来のシステム上での信頼性が既に確立されている。これに加えて、いずれは例えばクーポン配信などの売り上げを増やす仕組みとも密接につなげることができる。決済そのもののシステムは従来のプレーヤーに対して手数料を支払ったとしても、将来的に広告販促の部分でより大きな手数料が得られる可能性がある。つまり、人の傘を利用しながら、ユーザーインターフェースの部分と決済以外の新しい収益をも獲得しようとしている非常に面白い事例だ」(東海林氏)