活用例としては、建機や農機の遠隔監視、工場やプラントの監視制御、ビルの設備・入退館者の監視、車両鉄道運行管理、業務用設備の監視、家畜や農作物の監視、多店舗内設備や人の監視、家庭エネルギー管理システム(HEMS)の監視、社会インフラ設備の遠隔監視、ウェアラブルデバイスとの連携などがある。NTT Com自身が関係する事例としても以下のようなものがある。
- 農業経営の見える化を目的に農業機械の作業状況、故障状況をM2Mで提供し、農場ごとの作物情報をサーバに投入してデータを連携
- 工作機器の稼働率や作業ログ、故障状況をM2Mデータとして送信して稼働率を向上させるとともに保守サポートの迅速化を図る
- 九電工(福岡市)のエネルギー管理システム。ビルなど建物内の電力使用量などを見える化し、エネルギー消費量の削減を図るシステム
- レシップ(岐阜県本巣市)。バスと停留場をオンライン化し、GPSを利用してバスの位置情報を収集し、スマートフォンやPCにバスの到着予測時刻を提供している。将来的にはデジタルサイネージとの連動やコンテンツ配信への展開を検討
- SECエレベーター。映像を自動的に緊急監視センターに収集し、メンテナンスや定期点検コストを削減するとともに、顧客の防災、防犯体制を強化している
- 富士アイティ(東京都立川市)。東京駅一番街などで運用するロッカー管理。ロッカーの利用状況などを収集してデータをクラウドに蓄積し、スマートフォンやPCから空きロッカー情報を確認できるサービスを提供している
課題となるセキュリティと標準化
こうした可能性がある一方で、M2Mには課題も残されている。
グローバルに展開する場合には、その国の技適認証の獲得が必須となる。モバイル関連の事業拡大で国内外でニーズが拡大するようになった。
NTTコミュニケーションズ 技術開発部 環境・新エネルギーStrategic Unit 担当課長 境野哲氏
ネットワーク化にあたってはセキュリティが大きな課題となる。「企業側が発表していないため、ニュースにはなっていないものの、外部からの侵入によって工場の機械がストップする、食べ物を製造している企業が社内からレシピを盗まれるといった事件が起こったことを聞いている」(NTT Com 技術開発部 環境・新エネルギーStrategic Unit担当課長 境野哲氏)
M2M/IoTでは、データ取得、データ通信、データ処理、ソリューション提供、経営分析とデータを扱う全プロセスでセキュリティ対策が必要だと指摘している。
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対策のひとつの例として、VPN化を実施し、クラウドによる制御システムを監視することでデータ改ざんによって異常が起こっているにもかかわらず発見が遅れ、事故が起こるといったトラブルを回避する、正しいデータを把握するという提案を紹介した。
M2M/IoTのもう一つの課題として標準化を挙げている。標準化が進むことで、つながるデバイスやサービスが増加し、ユーザーにとっても利便性が高くなるからだ。
NTT Comでは、「oneM2M」「新世代M2Mコンソーシアム」「トランスペアレントクラウドコンソーシアム」「Wi-SUNアライアンス」という4つの標準化団体に参加している。
oneM2Mは、欧州電気通信標準化機構(European Telecommunications Standards Institute:ETSI)をベースに、M2M/IoT共通サービスレイヤにかかわる標準化の重複を避け、世界的合意が得られる仕様を策定を目指して発足した。欧州系企業が多く参加しているが、米国企業も参加している。
日本で設立された新世代M2Mコンソーシアムは、M2Mサービスの市場で活性化を目的に設立し、技術とサービスの両面から企業や個人、大学などが連携、協業するオープンな場となることを目指している。