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ビッグデータの本格活用を支援したい--ソフトウエアAGの細谷社長

鈴木恭子

2014-10-16 19:46

 「顧客がビジネスの課題を解決したいと考えた時、果たしてSoftware AGの名前が思い浮かぶだろうか」

 7月に同社日本法人の代表取締役社長に就任した細谷修平氏は自問自答する。

 「残念ながら、答えはNOだ」

 ビジネス基幹ソフトウエアを手掛けるドイツのSoftware AGは近年、「デジタルエンタープライズ」を戦略に掲げている。これは、顧客が抱えるシステム上の課題を、同社のソフトウエア技術とサービス両面から支援し、顧客の競争力強化を実現するものだ。

7月に同社日本法人の代表取締役社長に就任した細谷修平氏
7月に同社日本法人の代表取締役社長に就任した細谷修平氏

 「今、顧客を取り巻く環境は劇的に変化しています。表層的には1つに見える課題も、深掘りすればさまざまな要因が複合的に絡み合っています。その状況において、Software AGが課題解決のパートナーとして“選ばれる”ためには、顧客にとってユニーク(唯一無二)の存在でなければなりません」と細谷氏は力説する。

 細谷氏は今後、日本市場において、どのようなプレゼンスを高めていく戦略なのか。同氏とSoftware AGで最高執行責任者(COO)およびグローバル・エクステンディド・ボード アジア太平洋・日本地域、中東およびトルコ地域担当のStephen Keys氏に話を聞いた。

--社長就任から3カ月が経過しました。この3カ月で見えてきたものは何ですか。

 顧客視点で「Software AGの位置づけ」を考えると、われわれは「ツールベンダー」であると受け止めています。例えば、ビジネスプロセス分析ツールである「ARIS」やインテグレーションプラットフォーム「webMethods」、ビッグデータ活用のプラットフォームとなる「Terracotta」や「APAMA」など、個々の製品がどのような機能を提供するのかは、多くの顧客が知っています。

 われわれは企業/事業買収やイノベーションで、製品ポートフォリオを拡充し、顧客の課題に対応できるプラットフォームを構築しました。個々の課題に対応する製品はあります。

 しかし、製品がばらばらに存在しているため、顧客に対して「Software AGは最終的に何がしたいのか」を明示できていないと受け止めています。その状況を打破するためには、何よりもわれわれが顧客の課題を理解し、課題解決ソリューションとしてツールを組み合わせ、提示していくことだと考えています。

--現在、顧客となる企業が直面している課題は何か。

 製品別組織、販社別組織、ビジネスプロセスの組織など、既存の組織構成が「サイロ化」してしまっています。その結果、顧客がエンドユーザーに対して迅速にサービスを提供できていない。

課題の原因となるミスマッチ

 こうした課題の原因は、端的に言えば「ビジネスとITのミスマッチ」です。IT部門はビジネスプロセスがどのように動いているか、分からなくなっているんですね。例えば、受注から出荷までの「エンド・ツー・エンド」のプロセスにおいて「だれが、どの情報に対し、どのような処理を行い、出荷し、そのサービスの対価がいくらなのか」をLOB(Line Of Business=事業部門)が把握できていません。つまり、個々の部門が自分たちの守備範囲しか分からなくなり、会社全体のビジネスプロセスと、それが本当に効率的なのか判明しないまま、仕事が進んでいるのです。

 もう1つの課題はグローバル化でしょう。多くの日本企業は、グローバル規模でビジネスを展開しています。例えば、以前は系列会社だけで完結していたビジネスも、販路を海外に求めたり、逆に資材の調達などを海外から行ったりしています。しかし、既存のシステムは、グローバル化に対応していない。

--そうした課題に対し、具体的にどのようなアプローチをしていくのか。

 まずはわれわれ自身が顧客からビジネスの包括的な課題を相談される立場にならなくてはいけません。そのためには顧客にとって有益な情報を提供する必要があります。具体的には、積極的に海外の成功事例を紹介していきたいと考えています。単に、「○○社では○○が利用されています」といったことだけではなく、どういった課題を抱えていたのかを明確にし、そのためにどういうアプローチで解決しているのか。その結果、どのような価値改善があったのかを明確にした事例です。

 過去、日本の顧客は海外の事例に対して「日本とは違う」と拒否反応がありました。しかし、その反応は180度変化しています。今は「スピードの速い変化環境の中で、何をなすべきなのか。それを(他社は)どのように実現したのか」という情報を求めていらっしゃいます。

 多くの企業は、エンドユーザーに対してどのようにフックするかを試行錯誤している。つまり、今後はビジネスプロセスを「B to B to C」で考える必要があり、そのためのインテグレーションが求められているのです。そのためは、ビジネスプロセスで“網がけ”をし、短期間でその仕組みを実装していくことが求められています。残念ながら日本ではITを活用してビジネスの競争力を積極的に強化しようとする企業が(欧米と比較して)少ないと感じています。

 また、グローバルで最適化された取引や販売先の環境は、以前の環境とは異なります。しかし、海外向けに新たなシステムを構築するには時間的、コスト的に無理がある。その解決として、例えば5年かけて再構築するか、既存のシステムを生かしてデータの可視性を高めるため、ETL(Extract Transform Load=抽出/変換/ロード)と可視化のDBツールで管理に力を入れるという選択肢があります。

 われわれのオファリングは後者です。つまり今までの既存資産を上手に使いつつ、プロセスの変更に対しても許容し、情報の可視性に対しても対応できるアプローチをとります。顧客がBPM(Business Process Management)に即し、ビジネスの変化要求――データの可視性やプロセスの効率化、ビッグデータの活用など――に応えられる環境構築を支援できることをお伝えしていきます。

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